67歳女性記者、「捨て活」を再開 きっかけは29歳女性との渋谷での出会い、「私が看取る」と言われどうしたのか?

ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子。67歳となり、老後のことを考えると経済的にも健康面でも「かなりやばい」と自身のことを語る。そんなオバ記者が、なかなか進まない「捨て活」を再開することに。その意外なきっかけとは――。

【写真】捨て活によって出たゴミ袋6袋!その後、「私が看取る」と言った29歳女性と部屋でカンパイ!

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ひとり暮らし初老の女の大敵“GW”

「ああ、いよいよコロナは終結したんだな」とGW初日の東京駅構内でしばし足を止めて見回した私。耳をすませばこれから東京から出て行く人の話も聞こえるし、いま東京駅に着いた地方の人や外国人の声もする。鉄道マニアには列車の走行音を録音している“音鉄”という”種族”がいるけれど、それで言えば私は駅の音マニアだね。石川啄木の短歌、《ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを 聴きにゆく》じゃないけれど意味なく上野駅や東京駅の構内をぶらつくクセがあるんだわ。

正直言ってひとりぐらしの初老の女の大敵は“国民の祝日”というやつでね。特に気をつけなくてはならないのはお正月とお盆とGWよ。2年前に母親を見送ってからは故郷までなくなったみたいで、“帰省”という二文字を見ただけで「ふんっ」と横を向きたくなる。そんな自分を知っているから、今年はGW前に伊東へ3泊のひとりバカンスをして、この日はその帰り道。だから心穏やかに東京駅の通路で人の声なんか聞いて余裕かましていられたわけ。

渋谷で出会ったIT女子が「私が看取る」

余裕といえばもうひとつ思い当たることがある。少し前に“娘もどき”が現れたのよ。出会いは今年2月末で、渋谷のイベント会場で帰りしな声をかけてきたのがIT関連会社で働くC子(29歳)で、聞けば帰る方向がいっしょ。で、歩きながら話したら、私の苦手なIT 関係が得意中の得意だとか。それでLINEを交換して何回かやり取りをしたらC子、とんでもないことを書いてきたのよ。

「あの、気持ち悪いこと言ってもいいですか? 私、最初に野原さんと会った時にこの人は私が看取るんだなと思ちゃったんです」

ちょおおっとお~と、そりゃあ驚いたわよ。で、驚きながら「それは嬉しいけれど、看取る前にいっしょにお金儲けしない?」と私。C子は私が経済的にどれだけヤバい女か知らないし、私もC子が何者かはわからない。けれど私の内なる野生が「チャンス! チャンス! この女と仲良くなれ 」としきりにけしかけるんだよね。

経済的にも健康面でも「かなりやばい」

人生どん詰まり。人からどう見えるかわからないけれど冷静に考えたら今の私はかなりやばいと思う。経済的もそうだけど、もっとやばいのが健康面よ。例年通り、3月最悪で4月から持ち直し、5月の今はずいぶんいい感じになってきたけれど2日間バリバリ動いたら3日目はダウンして、家でちまちまとご飯を作ったりして一日が終わっちゃう。

これってどうなの?「何言ってんのよ。67歳ってそんなもん」という人もいるし、「2日バリバリ? ありえない。私なんか3日に半日くらい調子のいい日がある」という人がいる一方で、「言ってる意味がわからない」と首を振るのは70歳でフルタイムで食堂で働いているK美さん。人によって“体力年齢”が全然違うんだよね。

聞いたらそれぞれに山あり谷ありの人生で、仕事や家庭環境のストレスがまったくなかった人は1人もいない。けど、私みたいに夜も昼もなくタバコを指に挟んでギャンブル三昧の中年期を過ごした女もいない。「因果応報」「身から出たサビ」「自業自得」と言われたらひと言も返せないって。

で、問題はこれからどうするかよ。できる限り働いて原稿を書いてそんなに大きな迷惑をかけずに老齢期を生きて身仕舞いをしたい。それには何をすべきか。もう猶予はない。待ったなし。5月の連休明けには大学病院ですい臓にできたのう胞の検査結果も待っている。そんなことをぼんやり考えていたところに現れたのがC子よ。そんな私の事情は知らないのにこの娘、どんなつもりで「看取る」なんて口走ったのか? まずはそのあたりを聞きだそうと浅草で鰻をご馳走したわけ。

C子とともに捨て活を再開

「何であんなことを書いたのか、私もよくわかってないんですけど」と、29歳の小娘はニコニコしながら鰻重を半分に取り分けてくれる。「しいて言えば亡くなった叔母と広子さん、すごく似ているんですよね。それで縁を感じちゃって。私ってこういうスピリチュアルな気持ち悪いことでいろいろ決めるところがあるんですよ」だって。

それを言ったらギャンブラーはみんなスピ系だよ。半か長か、決めるのは天からの啓示で根拠なんかないんだから、という私の恥ずかしい過去の話はナシ。で、あくまでさりげなく聞いてみた。

「ところでさ。C子って掃除、好き?」と。「大得意です。うち、来た人が引くぐらいきれいですよ」とC子。

話は決まったね。ひとりでは一進一退で前に進まなかった捨て活をC子に手伝ってもらう。その代わり、私は食事を提供する。「どう?」と言ったら「よろこんで」というわけで、GW2日目は私とC子の片付け記念日になった。C子はうちから自転車で10分もかからないところに住んでいたのよ。まぁ、この娘になら家のごちゃごちゃを見せてもいいかとなぜか思ったの。またC子のいう「気持ち悪いスピリチュアル」なのかもね。

で、部屋に入ってくるなり「これはやりがいがあるぞ」と言うとC子は黙々と手を動かして、「この中からこれがないと死んじゃうと思うものだけ残して」と私に命じて2時間後にはご覧の通りごみ袋を6個出した後、ランチタイムになった。

私、この先、どうにかなるかも。最近、よく眠れるんだわ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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