風呂場の頑固な水アカ&ウロコ汚れはどう落とすか? カギは洗剤の使い分け!「クエン酸」「クリームクレンザー」を使った磨き方のコツ

浴槽は毎日洗っても、風呂場の鏡やガラス戸まで磨き上げている人は少ない。曇って見えにくいからと風呂用洗剤でこすっても、水アカやウロコ汚れは一向に落ちない。うっとうしい汚れをプロはどう落としているのか教わりました。素材に合わせた洗剤の選び方、磨き方を掃除のプロが徹底指南!

【写真】汚れたお風呂場の鏡はどうなったのか?衝撃のアフター写真

まずはウロコ汚れの正体を知る

そもそも風呂場の鏡にウロコ汚れが出現するのはなぜか? 家事代行サービス・ハウスクリーニングサービスを行う「ベアーズ」の久保田剛史さんは、次のように語る。

「浴室で体や髪を洗う際に、固形石けん・ボディーソープ・シャンプーなどの石けん成分と水道水のカルシウム、マグネシウムが混ざると『石けんカス』と呼ばれる汚れに変化します」(久保田さん・以下同)

これに加えて、“水はね”も汚れの原因になる。

「浴槽やシャワーから飛び散った水滴には、カルシウム・ケイ素・マグネシウムといったミネラル成分が含まれます。その水気は水滴となって蒸発し、ミネラル成分が結晶化して『水アカ』となります。水アカや石けんカスが蓄積することで、白く硬い『ウロコ汚れ』となるのです」

ちなみに水道水の水源は、河川水・ダム湖水・湖沼水・地下水などに分かれ、その成分は地域によって異なる。地下水を使用している場合はミネラル分が多く、頑固な水アカ汚れになりやすいという。

「汚れの原因によって洗剤は使い分けるべきで、風呂用洗剤だからといって、すべての汚れを取り除くことはできません。また、スポンジにも硬・軟があったり、スチールウールのようなタイプもあります。無造作に使って鏡やガラス表面に傷をつけてしまうと、鏡をさらに曇らせてしまうリスクがあります」

記者宅の風呂場の鏡は2年ほど見ないふりをして放置してきた。これまで何度か思い立って、風呂用洗剤でこすってみたが状況は変わらず、次第に面倒になり、汚れを放置してしまっていた。恥ずかしながら、久保田さんの判断を仰ぐと……。

「私がこれまで落としてきた汚れレベルでいうと、10段階中の5くらいですね。中性洗剤をつけて、スポンジでこすっても落ちないかと思います。汚れの原因は、石けんカスと水アカ汚れなので、酸性洗剤で分解し、研磨剤を使えば落とせます。酸性洗剤は変色の恐れがあるためマイルドタイプから始めて、徐々にレベルを上げ、落としきれない汚れは最終的に研磨剤で削り落とすところまで、4段階に分けて落としていきます。では、実際に始めてみましょう!」

こうして久保田さんの鏡磨きは始まった。記者宅の曇り鏡がピカピカになる過程を紹介する。

酸の力でウロコ汚れを浮かして落とす!

「まず洗剤選びですが、『汚れがアルカリ性なら酸性洗剤』『汚れが酸性ならアルカリ性洗剤』というように、汚れと反対の性質を持つ洗剤を選ぶのが基本です。鏡についたウロコ汚れはアルカリ性なので酸性洗剤を使用します。まずは、弱酸性タイプから始めるとよいでしょう」

LEVEL1 クエン酸

久保田さんが手にしたのはクエン酸スプレーだ。クエン酸は、酢やレモンなどの柑橘類などに多く含まれる、無味無臭の酸性成分。

「蓄積する前であれば、レモン汁や酢でも効果はあります。放置した頑固な汚れには、クエン酸などの酸性洗剤を使うとよいでしょう。それでも落ちなかったら、トイレ用洗剤の『サンポール』で落とします。サンポールは塩酸が配合されているので、ゴム手袋の装着が必須です。肌の弱い人はクエン酸使用時にもゴム手袋を使いましょう」

ちなみに、食器洗い用洗剤は「中性洗剤」で、酸性とアルカリ性の両方の性質を兼ね備えている。洗浄力はマイルドなので、一定の汚れは落とすが、長年蓄積した頑固なウロコ汚れまでは落とせない。

※「酸性」と「塩素系」の洗剤が混ざると有毒ガスが発生するため、酸性洗剤で清掃した日に塩素系のカビ取り用洗剤を使用すると危険。カビ掃除は翌日以降がおすすめ。

【1】熱めのシャワー(40℃以上)をかける

10秒ほどシャワーをかけて、汚れを浮かす湯温が熱いほど汚れが浮きやすくなる。

【2】洗剤を5~6プッシュする

上部から5~6プッシュ。下部にも垂れて、全体にまんべんなく塗布できるように。

【3】上からラップを覆って15分間放置

ラップで密閉することによりクエン酸の乾燥を防ぎ、水アカに浸透させる。

【4】ラップを丸めて軽くこする

【3】で貼り付けたラップをはがして丸め、直径3cmほどの円を描くように鏡の表面をこする。ラップはスポンジのように液を吸収しないため、汚れを浮かして溶かす効果がある。円を描くのは、多方向からまんべんなく力を加えるため。

【5】シャワーでいったん流す

全体を40℃以上のシャワーで10秒ほど流す。

【6】スポンジでこする

やわらかい面が変形しない程度のやさしい力で、上から下に向けて軽くこする。スポンジは、ナイロンやポリウレタンなどのソフトなものを選んで。

【7】から拭きする

水分が残ると次のウロコ汚れの発生源になるので、タオルや布巾などを使い円を描くように水気を拭き取る。

【ウロコ落ちた度60%】

鏡は少し見やすくなったもののまだ曇っている。そこで酸性の強いサンポールで残りの汚れを落とすことに。

LEVEL2 サンポール

クエン酸では落としきれないウロコ汚れに対応するため、強い酸性のトイレ用洗剤・サンポールを使用。「サンポールには塩酸が9.5%含まれ、強力な洗浄力があります。ただし、本来の使用対象とは異なるため、鏡に使用する場合は塗布時間を短くし、まめに水で流すといった慎重さが必要です」(久保田さん)。

ほかのトイレ用洗剤は、アルカリ性・弱アルカリ性・中性・マイルドな酸性などで、サンポールと同等の効果は得られない。

【1】40℃以上のシャワーをかける

【2】濡らしたスポンジに液を塗布する

スポンジに大きく3周、液を塗布する。

【3】小さな円を描きながらこする

クエン酸使用時と同様、直径3cmくらいの小さな円を描きながらスポンジが変形しない程度のやさしい力でこする。

【4】20秒たったら、40℃以上のシャワーでいったん流す

20秒ほどクルクルとやさしくこすったら、一度シャワーで流す。この動作を繰り返しながら汚れを落とす。同じ場所を何度もこする必要はない。強い酸性の液体なので、液体をつけたままにすると鏡が黒く変色したり、蛇口などに悪影響を及ぼす可能性がある。軽くこすることと、こまめにシャワーで流すことが鉄則!

【5】から拭きする

【Point】

サンポールは強い酸性なので注意が必要!

【1】ゴム手袋をつける

【2】蛇口などに液が残らないようにしっかり流す

【ウロコ落ちた度80%】

鏡はより見やすくなったが、まだ曇りがあり、表面はザラザラしている。酸で溶かすのはこれが限界かも。

LEVEL3 研磨剤で汚れを削る!

クリームクレンザーはケイ酸鉱物などの研磨剤成分を含む洗剤。研磨剤の含有率は20~50%が多く、風呂場などの水回りやキッチンシンクなどの清掃に向く。

「クレンザーは研磨剤入りの洗剤。界面活性剤で汚れを浮かし、浮いた汚れを研磨剤で削って落とします」

ただし、曇り止め加工をした鏡、もしくはアルミミラーは傷がつく可能性が高いので、事前に確認すること。

今回使用したのはクリームタイプ。粉末と比べて粒子が細かく、デリケートなので鏡を磨くのに最適だ。

「クレンザーで着目すべきは、研磨剤の含有率です」

100円ショップで販売されているものは含有率5%程度が多い。『ジフ』は20%、『ホーミング』『ステンライトクリームクレンザー』は50%となっている。

「汚れのつき具合によりますが、蓄積したウロコ汚れを落とすには、研磨剤の含有率が5%では弱すぎる。ウロコ汚れで鏡面が真っ白になっているような場合は、含有率50%の商品を選ぶ手も。ただし、研磨剤が多いほど、汚れが落ちやすい半面、鏡が傷つきやすいリスクがあるので慎重に」

【1】40℃以上のシャワーをかける

【2】濡らしたスポンジに液を塗布する

スポンジに大きく3周、液を塗布する。

【3】スポンジが変形するぐらいの力でこする

3cmくらいの円を描きながら、力を入れてこする(サンポールのときの力を1としたら、3~4の力で)。こすった箇所を指先で触れ、ザラザラ感が残っていれば、そこだけ再度こする。

【4】40℃以上のシャワーで流す

【5】から拭きする

【Point】

研磨剤は蛇口などシルバー類への使用厳禁!クレンザーのついたスポンジでこすると鏡に傷がついたり、温度表示などの数字が削れるなどのリスクがある。研磨剤を塗布したスポンジは専用、もしくは使い捨てにしよう。肌の弱い人はゴム手袋を装着して行おう。

【ウロコ落ちた度90%】

ザラザラしている部分がまだあるが、頑張りすぎると表面を傷つけかねないため、やりすぎは厳禁。次のステップに進もう。

LEVEL4 ダイヤモンドパフ

ダイヤモンドパフはダイヤモンド粒子を模した微細な研磨剤を使用し、汚れや水アカなどを効果的に削り取る。「メラミンスポンジ」は主に食器や壁などの汚れ落としには有効だが、鏡には適さない。また、たわしや消しゴムは研磨剤ではないため、こちらも不向き。

【1】40℃以上の湯を流しながら軽くこする

模様がついている硬い面を汚れに当てる。鏡とパフが接する面にシャワーの湯を当て、水をクッションにしながら、小さく円を描いてこする。

力の加減はサンポール使用時の力を1としたら、3~5くらいの力で。クレンザーで取りきれなかったザラザラ部分のみをこする。ジャリッとした感触があれば、研磨できた証拠。指先で確認し、ツルツルしていたら終了。から拭きで仕上げる。

【ウロコ落ちた度100%】

鏡がピカピカになり、浴室全体の明るさが増した。むやみにこすってもウロコ汚れは落ちないが、汚れの本質を理解し正しい手順をふめば、頑固な汚れも退治できる!

※本特集は記者宅のウロコ汚れ落としをレポートしたもので、水アカ・ウロコ汚れの程度や各種洗剤による汚れの落ち具合は、各家庭によって異なる。実践する際は、それぞれの状況に応じて行う。いきなり効きめが強い洗剤や研磨剤を使うと材質を傷めかねないので、本特集のように落ち具合を見ながら掃除を進めること。

※本特集中の商品価格はいずれも編集部調べ。

◆教えてくれたのは:ベアーズ・久保田剛史さん

「ハウスクリーニング本部」所属。広範な知識を生かし、約150のフランチャイズ店舗を管理・指導するスーパーバイザー。

取材・文/藤岡加奈子 写真/浅野剛

※女性セブン2024年8月1日号

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