胸を張るとテストステロンが増え、リーダーシップを発揮できる【科学が証明!ストレス解消法】

【科学が証明!ストレス解消法】#161

以前、このコラムで背筋をピンとすること──いかに「姿勢」が大事かということに触れました。今回は姿勢が周りに与える影響について考えてみたいと思います。

そのお話をする前に、姿勢を良くすることが自分自身にどのような影響をもたらすか、おさらいしておきましょう。

社会心理学者のカディの研究チームは、被験者を2つのグループに分け、次の実験(2012年)を行いました。

①背筋を伸ばしたり、のけ反ったりするような力強い姿勢で2分間座った被験者②背中を丸めたり、肩をすぼめたりするような姿勢で2分間座った被験者。その後、双方にギャンブルをしてもらったところ、①の被験者の86%がリスクを伴う賭けに出たといいます。

姿勢をたった2分間意識しただけで大胆に勇気を持って物事に臨めるようになったわけですが、この背景には決断力や積極性に関連するホルモン「テストステロン」の増加が顕著だったことが挙げられます。

実は、背筋を伸ばし、胸を張るような姿勢をすると「テストステロン」が増加し、ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」が減少することが分かっています。

霊長類の群れでは、力のあるボスや有能なリーダーはテストステロンが多く、コルチゾールが少ない傾向があるといわれています。ストレスに過敏であってはボスは務まりません。堂々とするからこそ、コルチゾールが減少しやすくなるわけです。

ところが、ボスの座を降りると、テストステロンが少なくなり、コルチゾールが増えることも分かっているというから興味深い。つまり、役割の違いが心を変え、ホルモンに違いを与えることが示唆されているのです。ホルモンは脳の作用によって分泌されるため、こうした変化が生じるのです。

この脳の作用に鑑みれば、ストレスがたまりそうな状況こそ、背筋をピンとし、胸を張るようにしてください。また、もし自分が責任者になるようなプロジェクトや取り組みにおいては、積極的に姿勢を良くするイメージを持って取り組むことです。

テストステロンは、ボス猿などの動物にも顕著に見られるホルモンです。いわゆる、フェロモンとして他者に影響を与えるため、堂々とした態度を取るボスに動物たちは付いていくわけです。ボスだからこそ(あるいはそうした立場であるからこそ)、テストステロンは増え、コルチゾールは少なくなる。さらには、周囲に与えるイメージも力強くなる。姿勢を意識しない手はないですよね。

そして、もしもあなたが今いる場所に所在のなさを感じていたとしても、せめて姿勢だけは堂々としていてください。姿勢まで悪いと、あなたに対する印象はより悪化してしまう可能性があります。

居心地が悪くても堂々とする。すると、周りに与える印象は必ず変わってきます。“役割の違いが心を変える”ということを思い出してください。

裏を返せば、心が変われば、役割も変わってくる。その心を変える、誰でもできる方法が胸を張ることなのです。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)

2024-04-19T00:58:14Z dg43tfdfdgfd