紅麹問題で注目を集める〈機能性表示食品〉今さら聞けないけど…一体何?効果はある?薬剤師が解説

事業者の責任で表示する機能性食品

食品は、健康に関する機能性(働き)が表示できない「一般食品」(明らか食品)と、機能性の表示ができる「保健機能食品」に分けられます。さらに保健機能食品には次の3つがあります。

特定保健用食品(トクホ)

健康の維持・増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められている食品。表示されている有効性や安全性について国が審査し、商品ごとに許可している。

栄養機能食品

1日に不足しがちな栄養成分の補給・補完を目的としたサプリメントなどの食品。すでに科学的根拠が確認されているビタミンやミネラルなど20の成分について、基準量を含む食品であれば、国に届け出なくても機能性を表示できる。

機能性表示食品

事業者の責任において機能性が表示された食品。事業者が機能性や安全性の根拠に関する情報などを国に届け出て、受理されれば表示が認められる。国の審査は必要ない。

保健機能食品は、以前は特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品の2種類だけでしたが、2015年から機能性表示食品が登場し、消費者の選択肢が広がりました。

なお、「医薬品」とは、病気の「治療」を目的とした薬のことで、厚生労働省の審査により、配合されている有効成分の効果が認められたものです。医師が処方する医薬品とドラックストアなどで購入することができる市販薬(OTC医薬品)があります。

表示の自由度が拡がり消費者の判断がより重要に

機能性表示食品は健康の維持・増進を目的とした食品ですが、最大の特徴は、トクホのように国の審査がなく、事業者の責任で表示できる点。事業者が製品の販売の60日前までに科学的根拠を示した過去の研究論文などの情報を消費者庁に届け出て受理されれば、商品そのものでの臨床試験を行わなくても「おなかの調子を整える」「目の健康に役立つ」などと機能性を表示して販売できます。

人が実際に商品を摂取して有効性などを確認する臨床試験が必要な医薬品やトクホに比べて、事業者は届け出から販売までの期間が短縮でき、費用も縮小できるため、商品化しやすくなるのです。

表示についてもトクホは「血糖値が気になる人」など特定の人に限られた表示が多いのですが、機能性表示食品では対象者を限定せず、「目」や「鼻」といった部位や、「ストレス」「睡眠」などのように表示できる幅が広がっているのが特徴です。

機能性の情報を具体的に示す商品が増えたことにより、消費者は自分の健康に合わせた商品を購入しやすくなったといえます。

しかし、機能性表示食品の機能性や安全性はあくまでも事業者の「自己申告」。国がお墨付きを与えたわけではありません。機能性をうたう製品が身近になった分、消費者の自己責任の範囲も広がったといえるでしょう。

また、機能性表示食品をめぐっては、根拠となる研究論文のレベルや信頼性を消費者が見極めるのが難しいことや、事業者の品質管理などによって、機能性の効果にばらつきが生じてしまうことなどが課題とされています。こうした点から、機能性表示食品の有効性や安全性に対する信頼性に疑問が生じていることも事実です。

さらに、実際以上の効果を期待させる広告も散見されるので注意が必要です。機能性表示食品の活用を考える際には、こうした問題点を十分に理解した上で利用することが大切です。

医薬品ではないと理解し、適切に利用を

機能性表示食品は医薬品ではないため、治療目的には使えません。健康の維持・増進を目的とし、自分の健康状態や食生活、ライフスタイルなどとのバランスを考えた上で、適切に利用することが大事です。また、大量に摂取すればより高い効果が期待できるというものでもありませんので、パッケージに記載されている1日の摂取目安量、摂取方法、摂取する上での注意事項を守って利用しましょう。

病気の人は利用前に医師や薬剤師に相談を

機能性表示食品のパッケージには、注意事項の一つとして「疾病の診断、治療、予防を目的とした商品ではない」との内容の記載があります。製品の中にはサプリメント形態(錠剤・カプセル剤)の商品もあるので、医薬品と混同しないように注意しましょう。病気の人や特定の薬を服用中の人は、まず医師や薬剤師に相談してください。

自分に合う商品が分からない時は……

自分に合う商品が分からない時は、薬局・薬店、ドラッグストアの薬剤師、または登録販売者に相談しましょう。現在の健康状態やどのような点に健康不安を感じているかについて伝えると、スムーズなコミュニケーションが図れます。

まとめ

機能性表示食品は、医薬品やトクホとは異なり、有効性や安全性に関する国の審査が必要ありません。そのため、さまざまな機能を訴求でき、生活者の幅広いニーズに応えることができる一方、利用する側の自己責任の範囲も広くなります。

また、医薬品とは異なり、病気の治療や予防を目的としたものではないため、混同を避ける必要もあります。テレビやインターネットなどで宣伝しているからといった安易な理由で使用するのは考えものです。自分の健康上の問題や悩みに対応した製品かどうか、医師や薬剤師、登録販売者などに相談して、慎重に選んで使用することをおすすめします。

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士)理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。

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