無防備な寝顔ってそれ、軽装備済みかも。「真の無防備」な姿はドラマとは別物【連載 #発酵適齢期】

こんにちは。ライターの高木沙織です。

相手の無防備な姿にドキッとした―。例えば、お酒を飲んでほろ酔いになった姿や、何も考えずにただボーッとしている姿。ノーメイクのときなんかも、無防備な姿に含まれるそうで、これはつまり普段あまり見せることのない素の姿一種の隙のようなものだと考えます。それが、ふと垣間見えたとき、自分だけが知り得た特別なものに対して湧く愛着がこのドキッの正体なんじゃないでしょうか。

さて、ここで忘れてはいけないのが無防備の極みといっても過言ではない寝ているときの姿です。「すやすやと子どものような寝顔にキュンとした」だとっ!? それ、その人絶対寝てないですよね? 寝たふりですよね? そうであってくれないと、寝ているときの姿に自信がない私は救われない……。

26回目の『発酵適齢期』、今回は「真の無防備」について。

寝顔がカワイイだなんて、ドラマのワンシーンの話

恋を盛り上げる要素のひとつ・無防備な姿。ドラマや映画、小説のなかでも、普段はキリッとしている人が、フニャッとした姿を見せたとき、そこに無防備さを感じてトキメク描写がよく使われています。

その最たるものが、寝ているとき。寝相は横向き、手はあごの下あたりでちょんと重ねているか、毛布の端をキュッとつかんでいるかも。さらには口角が上がっていて、うっすら微笑んで見える幸せそうな寝顔。……って、そんなわけあるかい!というのが心から漏れ出した私の本音です。 

いいですか、一気に語りますよ? そもそも熟睡しているときというのは、真の無防備な姿をさらしているんです。口のまわりの筋肉だって休みたいんだから、口角なんてジェットコースターの下りのレールくらい下降しているはず。それ以前に、横向きで寝ようものなら顔の脂肪が下に流れて、起きているときよりも可愛さ7割減くらいになりますよね。それなら仰向けは?と寝相を変えてみたところで、今度は口がポカンと大きく開いちゃう。寝顔を見られないための最終手段ともいえるうつ伏せは、苦しくて無理……。

悩みや嫌なことがあるときは、薄っすら笑顔どころか眉間にシワが寄った苦悶の表情が浮かびます。肌は皮脂でテカるし、目頭にたまる目やにだって正常な代謝活動でできた老廃物。寝る前にいくら口の中を清潔にしても、多少の口臭がでてくるのが当たり前。

恋愛ドラマのワンシーンでは、こんな描写はあまりされませんよね。だけど、真の無防備な姿といったらこれに勝るものはないでしょう? 

備えられること、備えられないことがある

そもそも無防備とは、「危険や災害に対する備えのないこと」の意味。寝ているとき、誰かに見られるだなんていうのはある種の危機的状況ですから、無防備だというのにも納得です。でも実は、ちょっとした努力で真の無防備を相手に気づかれない程度の軽装備に変えることができちゃう。

例えば、つけたまま眠れるナイトパウダーを肌にはたいておく、唇が乾燥しないようにリップを塗っておく、それだけでカバーできないときはナチュラルメイクをするかもしれない。相手と反対を向いて寝る、毛布を深くかぶる……なんていう方法は、寝返りを打つだろうから気休め程度でしょうか。

しかし残念ながら、睡眠時の無防備さゆえに起こる事象はまだあります。歯ぎしりやいびき、寝言、よだれ、おなら、お腹のゴロゴロ音、寝相のたぐいです。中には、頑張ってどうにかできる範疇にないものもちらほら。そう考えると、意中の相手のとなりで全力で寝るのってハードルが高くない? これらを踏まえたうえで、相手のことを愛おしいと思うのなら「ドキッ」なんて非ではない。それはきっと、好きの先の領域に進んでいるのでしょう。寝ているときの姿をはじめ、動向にさっぱり自信を持てない私には羨ましいことこの上ない話です。

いや、ちょっと待って! 一度、逆の立場になってみようと思います。就寝中の相手の無防備な姿があっぱれなものだった場合、「あ~疲れているんだな」くらいのもので、好き・嫌いの判断材料になっていない自分がいるのも確かです。

とはいえ、やっぱり私は1人で寝たい。寝ているときくらいは、すべてのしがらみや抑圧から解放されて、真の無防備な姿を大いにさらけ出したいのです。おならがしたくなったくらいでは、ぬくぬくと温かい布団を出てまでトイレに行きたくないのです。

眠ることに、多少なりとも努力を強いられるとなると、体や脳の休息・修復のための時間なのに、ちっとも休まらない気がする。いわずもがな、寝不足で迎える翌日は外見も体調も、集中力もあらゆるコンディションが悪くなります。冗談抜きでこれ、20~30代の頃と比べものにならないレベルで!

年齢を重ねるごとに、睡眠の質が悪くなるのは仕方がないこと。誰かと一緒に寝ることで得られるぬくもりや安心感はあるけれど、十分に休めないのなら、話はちょっと変わってきます。恋愛の「ドキッ」よりも、「しっかり休みたい」に意識が向いているのは、私が大人になったからなのかもしれません。

今、私の横で毎晩一緒に寝ているのは愛猫の小虎(ことら・6歳)。もし叶うのなら、彼に聞いてみたい。寝ているあいだの私ってどう?……って。

ではまた、27回目で。

高木沙織

ヨガインストラクター。「美」と「健康」には密接な関係があることから、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。ヨガインストラクターとしては、骨盤ヨガや産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスなどボディメイクをサポートし、野菜や果物、雑穀に関する資格も複数所有。“スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ボディメイクや食に関する記事執筆・イベントをおこない、多角的なサポートを得意とする。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。産前産後ヨガインストラクター資格、Core Power Yoga CPY®、筋膜リリースヨガインストラクター資格を保有。

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