初夏だからこそ気をつけたい糖尿病の熱中症…暑熱順化が不十分

地球温暖化のせいか、年々暑くなるのが早くなっていると感じる人も多いのではないか。今年も4月15日に新潟県三条市の最高気温が4月としては観測史上1位となる32.5度を記録。本州としては今年初めて気温が30度以上の真夏日となった。その後、全国各地で真夏日が観測されるようになっているが、気温が30度を超えると熱中症で救急搬送される人が増えてくる。糖尿病の人はとくに気をつけたい。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京都大田区蒲田)の辛浩基院長に話を聞いた。

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「そもそも5月は健康な人でも暑熱順化が完成されておらず、熱中症になりやすい。糖尿病の人は健康な人よりもさらに熱中症になりやすい。初夏で過ごしやすい気候とはいえ、汗をかくなど体内から水分は絶えず失われているので、糖尿病の人は熱中症には十分気をつけなければなりません」

暑熱順化とは、体を暑さに慣れさせることをいい、具体的には汗をかける体にすることを指す。

「人は体内の熱を汗として体外に放出することで体温調節を行っていますが、汗をかく機会が少ない冬から春先にかけては汗を出す汗腺機能が低下していてうまく汗をかくことができません。急に真夏の暑さに襲われる5月ごろから、体が順応できずに熱中症になる人が増えてくるのです」

実際、総務省が昨年10月に公表した「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、全国で5月に熱中症で救急搬送された人数は3655人。統計を取り始めた2015年以降5月としては2番目に多かった。都道府県別で見ると、5月に熱中症で救急搬送された人が最も多かったのは東京都(270人)で、以下、埼玉(269人)、愛知(259人)、大阪(201人)。ほかに3桁に乗ったのは福岡、神奈川、千葉、京都、兵庫、熊本だった。

「糖尿病の人は血管や神経に障害が起きやすいため汗をかきにくく、体内に熱がこもって体温調節が難しくなります。糖尿病の高齢者はとくに喉の渇きに気づきにくいので、知らず知らずのうちに脱水状態から熱中症になってしまうケースが多くなるのです」

そもそも、血糖値が高いと尿に糖分や水分が出やすくなり、体中の水分が排出されて脱水状態になりやすい。脱水状態になると、それ以上水分を減らさないため汗を出すのをストップしてしまうため、熱中症リスクがさらに高くなる。

糖尿病薬を飲んでいる人はとくに気をつける必要がある。たとえば、SGLT2阻害薬は、体の中に余っている糖分を尿とともに体外に排出する働きがあるため、飲み始めの2週間ほどはとくに尿量が増える。

「糖尿病の人の脱水が怖いのは熱中症リスクが上がるからだけではありません。尿から糖分を排出することができなくなり、血糖値が上昇してしまいます。そうなると糖尿病ケトアシドーシスを引き起こして昏睡状態に陥る場合もあります」

糖尿病ケトアシドーシスとは急性の糖尿病の合併症のひとつ。高血糖が続くことは全身の細胞に血糖を取り込むインスリンの働きが不足していることであり、それは血糖をエネルギーとして使えない、エネルギー不足状態であることを意味する。

そうすると、緊急避難的に人間は脂肪を分解してエネルギー源とする。結果、血液は酸性に傾き、高度の脱水症状となる。

また、血液中から水分が抜けると血液が固まりやすくなり、血栓ができやすい。そうすると脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まる。

■運動前後、就寝前、起床後に体重を測る

では、糖尿病の人は、これからの熱中症対策はどのようにすればいいのか?

「暑いと感じたときのこまめな水分補給が基本。暑さを感じにくい人は、とくに運動前後、就寝時と起床時の体重を量り、失われた水分量を視覚化するよう努めましょう」

汗をかくと水分と同時にナトリウムが失われる。ナトリウムは細胞膜を通じて細胞内外の体液のイオンなどの濃度を一定に保つ役割があり、カリウムと一緒になって血圧調整したり、他のミネラルが血液中に溶けるのを促進したりする。

「筋肉の収縮や神経伝達を正常に保つ働きもあり、不足すると筋肉に痛みが出たり、熱疲労の回復が遅れたりします。大量に汗をかいた場合は補水液を使うのがよく、スポーツドリンクはエネルギー補給目的で大量の糖質を含んだものがあるので注意が必要です」

運動するときは気温の高くなる午前11時~午後3時くらいは避け、服装は吸湿性、通気性の良い、直射日光を吸収しないよう白っぽい色のものを選ぶこと。利尿作用があるので、運動の前後の飲酒を控えることは言うまでもない。

「いまは真夏に備えて暑さに慣れるトレーニングをする時期。水分補給に注意しつつ体を動かして、汗をかく習慣をつけることが大切です」

2024-05-02T01:32:02Z dg43tfdfdgfd