高等教育が将来の認知症リスクを下げる可能性があることが、最新の研究で明らかになった。ヘルシンキ大学の研究チームによると、教育を長く受けた人ほど、高齢になってからの認知機能の低下が抑えられるという。
この研究では、1975年に始まり、約50年にわたって参加者の健康状態を追跡した長期調査のデータが用いられた。調査開始当初に記録された、認知機能の低下につながる要因や、それを防ぐと考えられる要因が、90歳を超えた人の脳の働きにどのような影響を及ぼしているかが分析された。データには、参加者自身が回答した、小学校、中等教育、職業訓練、大学教育のいずれかに該当する教育のレベルに関する情報も含まれていた。結果、教育は90歳時点の認知機能の低下を抑えるのに役立つことが示された。
学校教育を12年以上受けた人は、7年未満しか教育を受けていない人に比べて、認知機能テストで良い結果を出していた。また、教育年数が7〜11年の人も、7年未満の人より高い成績を示した。90歳という高齢でも教育が脳の衰えを補う力に関わっており、その補う力を高めている可能性があると、今回の研究の筆頭著者でヘルシンキ大学の博士研究員アンニ・ヴァルヨネン氏は考えている。研究では、心臓や血管の病気のリスクと高齢期の認知機能の関係も調査されたが、明確なつながりは見つからなかった。
ヴァルヨネン氏によると、認知症はさまざまな生活習慣が関係する複雑な病気であり、リスクを高める要因もあれば、抑える要因もあるという。すべての人が長期間の正規教育を受けられるわけではないが、加齢による変化を補う脳の働きを高め、認知症のリスクを抑えるのに役立つ他の方法もあるとヴァルヨネン氏は話す。具体的には、社会的なつながりを持つこと、身体活動、血圧やコレステロールの管理、バランスのとれた食生活、喫煙を避けること、過度な飲酒を控えることなどが挙げられる。また、研究者たちは、教育の水準が社会経済的要因や子どものころの認知機能とも関連していることが多く、これらも認知機能の維持に影響している可能性があると指摘している。
2023年には日本の研究者らにより、大人向けの教育講座を受けることが認知症のリスクを下げる可能性が示唆された。同研究では、中高年から高齢者が成人教育を受けることで、5年以内に認知症を発症する確率が19%低くなることが示された。ヴァルヨネン氏と共同で今回の研究を主導したエーロ・ヴオクシマ氏は、「認知機能の加齢変化について90代の人を対象にした研究は現状では非常に少ないですが、この年代の人口が今後増えることを考えると重要なテーマとなります。さらに、記憶障害の発症率は高齢後期に最も高くなるのです。」と述べており、今後の研究への期待が寄せられている。
出典
https://www.helsinki.fi/en/news/brain/education-protects-memory-even-people-over-90
https://www.independent.co.uk/news/health/education-dementia-study-helsinki-school-b2838873.html
HIDEMI
ヨガ講師 /ヨガ翻訳・通訳者色、音、言葉が好き。同志社大学国文学科在学中は日本語学を学び、中学生の頃から独自に英語の学びを深める。サロンモデルをしながら、ジュエリーブランド、コスメブランド勤務を経て、2015年よりヨガの指導を始める。外国人講師のWSやTTの通訳、テキスト翻訳等、ヨガ関係の通訳/翻訳業も行う。
2025-11-03T10:54:08Z