話題のNHKドラマ主人公の膠原病 20代~40代が発症ピークの病気も!その症状とは?専門医に聞く

若い女性に多い全身性エリテマトーデス。もしこんな症状があったら?

膠原病のひとつである「全身性エリテマトーデス(SLE: systemic lupus erythematosus)」という病気は、耳慣れない人も多いと思います。いったいどのような病気なのでしょうか?

「全身性エリテマトーデスは、発熱、全身倦怠感などの全身的な炎症と、関節、皮膚、内臓などへのさまざまな臓器の障害が起こる病気です。原因は、さまざまな要因があるとされていて今のところはっきりとわかっていませんが、ほかの膠原病と同じように自己免疫疾患で、免疫の異常が大きくかかわっています」と平松ゆり先生。

全身性エリテマトーデスは、膠原病の中でも比較的若い20代~40代の女性によく起こる病気で、日本全国に6万~10万人の患者さんがいると考えられています。男女比は1:9と圧倒的に女性に多い病気です。

「自覚症状としては、微熱(ときに高熱)、倦怠感、皮膚症状が特に有名で、頬にできる赤い発疹です。蝶が羽を広げている形をしているので、蝶型紅斑(ちょうけいこうはん)とも呼ばれています。初期の症状として、約20%の人に現れると言われています。また、表皮の角質層が厚くなって隆起し、やがて剥がれて脱落する紅斑(こうはん)も特徴的で、顔面、耳、首のまわりなどにできます。そのほか、しもやけのような症状も見られることがあります。日光過敏症、口内炎、脱毛、関節痛、むくみなど、さまざまな症状が生じることがあります」(平松先生)

ほかに、臓器の障害の症状としては、血球減少症(白血球、赤血球・ヘモグロビン、血小板数の低下)、胸膜炎、心膜炎、腎炎(尿たんぱく)があり、精神神経症状(けいれん、うつ、情緒不安定、不眠)などが見られることもあります。

【全身性エリテマトーデスのおもな初期症状は…】

・蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)…鼻から両頬にかけて、赤い斑点が蝶のような形に表れる。かゆみや痛みはない。初期の症状として約20%の人に現れる。

・関節炎…関節内で炎症が起こり、関節に痛みを伴う。初期症状の中で最も多い。

・発熱…微熱が続く、もしくは38℃を超える発熱。

・レイノー現象…寒さや冷たいものに触れることなどによって、指先の血流が低下し、青白くなる。数分から約10分で元に戻る。

・全身症状…だるい、疲れやすい、体重の変動、日光過敏症、脱毛、口内炎、むくみ、筋肉痛、精神神経症状、食欲不振など。

これらすべての症状が同時に現れるわけではなく、人によって現れる症状やその程度は異なります。内臓の障害のない軽症の患者さんもいます。しかしなかには、臓器の合併症があり、重症になると命にかかわることもあります。また、関節リウマチ、シェーグレン症候群や抗リン脂質抗体症候群など、ほかの膠原病と合併することもあります。

早期発見・予防のために大事なことは?

「早期発見で大事なことは、上記の症状を感じて数週間長引くようなら、膠原病の専門医がいる病院で相談してください。症状があるのに放置していると、体が消耗し、病気が進んでいきます。時に腎機能が低下して透析が必要になる場合や、免疫が暴走して治療してもよくならないこともあります」(平松先生)

また、症状以外に、健康診断の結果で注意したほうがいい項目があります。健診結果では、尿たんぱくや尿潜血がある、白血球数、ヘモグロビン、血小板数が低値の場合は注意する必要があります。

「原因や発症のきっかけは、残念ながら、ほかの膠原病と同様に、全身性エリテマトーデスについても明確にはわかっていません。血縁に膠原病の人がいるなど、遺伝的な体質に加えて、紫外線(日光)、ウイルス感染、細菌感染、妊娠・出産、薬剤、手術など、なんらかの環境的な要因がきっかけとなって発症すると考えられています」と平松先生。

血縁の家族に膠原病の方がいる場合や、先ほどあげた症状のいくつかが長期間続く場合は、病院を受診して相談することが大切です。全身性エリテマトーデスの疑いがあれば、リウマチ・膠原病の専門医を紹介してもらいましょう。皮膚科でも紹介してくれます。

【リウマチ・膠原病の専門医を探したい】

「一般社団法人日本リウマチ学会」のホームページに、全国の地域ごとの専門医・指導医・専門医のいる施設検索があります。

病院ではどんな検査と治療になる?

専門医がいる病院では、どのような検査をするのでしょうか?

「全身性エリテマトーデスの診断は、問診、視診、触診、そのほか血液検査・尿検査や 画像検査で総合的に診断していきます」と平松先生。

問診では、「どういった症状がいつから現れたのか」 「過去にどのような既往歴があるか」「健康診断でこれまで異常を指摘された項目はあ るか」 「家族に膠原病の人がいるか」などを確認します。視診や触診では、皮膚症状や関節症 状のほか、全身の症状を調べます。血液検査と尿検査も行います。血液検査は、免疫の 異常や白血球や血小板減少の有無、全身性エリテマトーデスとかかわる自己抗体、腎機 能や肝機能など、臓器の状態などを調べます。尿検査では、尿たんぱくや尿潜血を見て 、腎臓の機能を確認します。また、脳や神経、肺などの状態を調べるために、 MRIやCTなどの画像検査を行うこともあります。

皮膚症状については皮膚科で皮膚生検 を行って調べていきます。

どのような治療になるのでしょうか?

「ほかの膠原病と同じく、現時点では全身性エリテマトーデスは、完全に治すことはで きないとされています。病気が落ち着いて安定している状態(寛解)を維持することが 治療の目標です。皮膚症状や関節症状に対しては、『消炎鎮痛剤』や少量の『ステロイ ド剤』『免疫調整剤・抑制剤』などが使われます。腎炎や中枢神経病変などを合併している場合には、必要に応じて、ステロイドパルス療法や大量ステロイド療法、免疫抑制 薬、生物学的製剤、 抗がん剤が使われます。特に副腎皮質ステロイド剤は様々な副作用もありますので、副 用を抑える薬も併用しながら治療を行っていきます」(平松先生) 

紫外線対策には十分注意が必要

日常生活で気をつけることは、強い紫外線に当たることが病気の悪化の原因に繋がるため、紫外線対策をつねに十分に行なうことが重要です。また、ステロイド剤、免疫抑制剤を使っているときは、細菌やウイルスに対する免疫の機能も抑えられてしまうので、感染症にかかりやすくなります。手洗い、うがい、マスクなどの感染症対策が大切です。長期間、ステロイドを使用する場合は、骨粗鬆症、動脈硬化、高血圧、脂質異常症、糖尿病などへの対策も必要になります。血栓症やエコノミークラス症候群にも注意が必要です。

「比較的、若い世代の女性の罹患が多く、治療薬によって月経異常や妊娠・出産の力の低下を起こすこともあります。また、月経異常があるときの治療として、病気の状態によっては低用量ピルが内服しにくい場合もあります。婦人科のがん検診も含めて、膠原病について理解のあるかかりつけの婦人科医を見つけておけるといいと思います。主治医に紹介してもらうのもいいでしょう。また、病気の特性から、ストレスによって、治まっていた病気が再燃することも少なくありません。ご家族や周りの方の協力を得て、なるべくストレスが少ない生活を送ることが大切です。また、治療が開始したら、定期的な通院とお薬については、自己判断せずに、主治医の指示に必ず従ってください」(平松先生)

【全身性エリテマトーデス(SLE)の詳しい情報はこちらから】

『SmiLE.jp』   

LINEアカウント『SLEケアナビ』

お話を伺ったのは…平松ゆり(ひらまつゆり)先生

大阪医科薬科大学病院リウマチ膠原病内科 母性内科外来

2009年関西医科大学医学部卒業。大阪医科大学リウマチ膠原病内科入局。大阪医科大学大学院医学研究科博士課程修了。2018年より大阪医科大学リウマチ膠原病内科助教(現・大阪医科薬科大学)。2013年より同大学病院で膠原病疾患女性の妊娠をサポートする母性内科外来を開設、担当(現在非常勤勤務)。日本内科学会認定医、日本リウマチ学会専門医・指導医、評議委員。日本女性医学会女性ヘルスケア専門医、日本母性内科学会診療プロバイダー。

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon

2025-06-07T11:57:33Z