「評価されないと不安になる…」職場での“他者承認依存”に気づいたときの対処法|心理師が解説

他者承認依存とは?

一生懸命に働いているのに、どこか心が満たされず、評価されないと不安になる。それはもしかしたら、“他者承認依存”のサインかもしれません。他者承認依存とは、自分の価値や存在意義を、他人からの評価や反応に過度に委ねてしまう傾向のことを指します。

「誰かに認めてもらえなければ、自分には意味がない」と感じてしまうこの心の動きは、幼少期の体験や、過去に「頑張れば褒められる」「いい子にしていれば好かれる」という記憶から根づいていることもあります。本来、人は誰しも他者の承認を求める生き物です。それ自体は自然な感情ですが、それが“過度”になると、自分の感情やニーズが置き去りにされてしまい、やがて心がすり減っていくリスクがあります。

職場での「他者承認依存」あるある

職場は特に「評価」がつきまとう環境です。そのため、他者承認依存の傾向は、非常に目立ちやすく、苦しみやすい場でもあります。

上司の評価に振り回される

「同期は褒められたのに、私は何も言われなかった」——たったそれだけで、「もしかして期待外れだった?」「見放されたかも…」と不安になる。仕事内容よりも“どう思われているか”が気になり、常に神経をすり減らしてしまいます。

同僚の視線が気になりすぎる

「迷惑をかけたくない」「ちゃんとやってると思われたい」と、無理をして「大丈夫です」と言ってしまう。本音ではもっと休みたいのに、気を遣って休めない。できる自分を演じるうちに、疲れ果ててしまうことも。

断れない・頼まれるとNOが言えない

「頼られるのはうれしい。でも、そろそろきつい」——限界に近くなっても断れず、笑顔で引き受けてしまう。感謝されなかったときに「なんでこんなに頑張ってるのに…」と虚しさがこみあげたり、自己犠牲が続いてイライラしたりする。

自分を見失うリスク

承認を得るために行動しているうちに、「本当は自分がどうしたかったのか」がわからなくなることがあります。それは、「私は何をしたいのか」よりも、「どう思われるか」が基準になってしまうからです。仕事が終わっても、達成感ではなく、モヤモヤや疲れだけが残る。誰かの顔色を気にし続けることで、次第に自信や活力を失い、最終的には心のエネルギーが切れてしまうケースもあります。いわゆる「燃え尽き症候群」や抑うつ状態に至るリスクも少なくありません。

気づきの第一歩として

承認されたいという気持ちは、人間にとって自然で大切な感情です。だからこそ、「自分ってダメだな」「依存してるなんて恥ずかしい」と責める必要はありません。大事なのは、“他人の評価だけ”にすべてを預けすぎていないかに気づくことです。たとえば、こんな小さな問いを自分に投げかけてみてください。

「私は今日、どんなときに心地よさを感じた?」

「誰かの期待ではなく、自分が選んだことはなんだった?」

「私が今日、自分のためにしてあげられたことは?」

毎日でなくてもかまいません。少しずつ、「自分からの承認」を育てていくことは、自分の軸を取り戻す第一歩になります。誰かに認められたくて、期待に応えようと頑張っている。その努力はきっと、まわりの人の助けになっているはずです。でも、それが“あなたらしさ”をすり減らすものになっているなら、少しだけ立ち止まってみてもいいかもしれません。あなたの価値は、誰かの言葉や反応だけで決まるものではありません。あなた自身が、あなたの気持ちを認めてあげることで、はじめて心は安心できるのです。

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。

2025-06-05T12:04:41Z