「私には価値がない」と感じてしまう人へ「自己肯定感」を育むためのステップ|心理師が解説

欠陥/恥スキーマとは?

「こんな自分はダメだ」「本当の自分を知られたら嫌われる」これは、欠陥/恥スキーマと呼ばれる心のクセによるものかもしれません。自分の存在そのものに恥や欠落感を感じ、無意識のうちに「私は劣っている」「どこかおかしい」と信じてしまう状態です。このような考え方に苦しむ人は少なくありませんが、丁寧に向き合い、少しずつ解きほぐしていくことで、穏やかな自己受容が育っていきます。この記事では、欠陥感から抜け出すための5つのステップを紹介します。

ステップ1:まず「気づく」ことから始める

第一歩は、自分の中に「私はダメだ」「価値がない」といったスキーマがあると気づくことです。スキーマとは信念や価値観のことです。

何かうまくいかなかったとき、「私はダメだ」とすぐに感じる。

人からちょっと注意されただけで、「使えないやつだと思われた」と思い込んでしまう。

このような反応が繰り返されるとき、自分の中に深く根づいた“自己否定のクセ”があるかもしれません。これは性格ではなく、過去の経験から形成された「思い込み」であることが多いのです。

ステップ2:「そのままの自分はダメ」という思い込みに挑戦する

欠陥感の背景には、「ありのままの自分は受け入れられない」「ちゃんとできる私でなければ価値がない」という考えがあります。この思い込みを見直すには、まずは日常の中で自分の内なる声に耳を傾けましょう。たとえば、失敗したときに心の中でどんな言葉が浮かんでくるかを観察してみてください。そして、自分に問いかけてみてください。

それは本当に事実?

誰がそう言ったの?過去の誰かの声では?

自動的な自己否定を“立ち止まって見つめる”だけでも、反応のパターンは少しずつ変わっていきます。

ステップ3:セルフコンパッションを実践する

欠陥感に苦しむ人にとって、効果的なのがセルフコンパッション(自分への思いやり)の実践です。セルフコンパッションとは、自分がつらいときに「そんな自分でも大丈夫だよ」とあたたかく声をかける姿勢のこと。以下のようなステップで行えます

今、自分が苦しいと感じていることを認める

「これは人間なら誰でも経験する感情だ」と思い出す

「よくがんばってるね」「つらかったね」と自分に優しく語りかける

このプロセスを繰り返すことで、内なる「否定の声」が少しずつ「理解の声」へと変わっていきます。

ステップ4:「嫌いな自分」との関係を変える

欠陥感を抱えていると、自分の“過去”や“弱い部分”を嫌いになってしまいがちです。でも、本当の変化は、その「嫌いな自分」に少しずつあたたかいまなざしを向けることから始まります。

たとえば、子どもの頃の写真を見て、当時の自分に「よくがんばってたね」と声をかけてみる。失敗ばかりしていた過去を「それでも生きてきた自分」として振り返る。

“許せなかった過去の自分”に対して、ほんの少しの優しさを注ぐだけで、心の風景は大きく変わっていきます。

ステップ5:誰かに否定されても、自分の価値を守れる土台を育てる

変化の指標のひとつは、「他人の否定的な言葉に過剰に傷つかなくなること」です。

たとえば、誰かに「あなたは無能だ」と言われたとしても、「そうかもしれない…」ではなく、「それはあなたの見方。でも私は私のことを知っている」と思えるようになること。

これは、自分との関係性が深まり、自己肯定感の“土台”が育った証拠です。

「自分はダメだ」と思い込んでいた人が、「こんな自分でもいい」と思えるようになること。それは、ほんの小さな気づきと優しさの積み重ねで起こります。完璧じゃなくても、人に好かれなくても、“欠けたまま”のあなたには、ちゃんと価値があります。あなたがあなたに優しくなることが、回復の第一歩です。

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。

2025-06-06T11:08:49Z