食品に含まれる栄養素は、そのままの形ですべて吸収されるわけではありません。
栄養素を摂取した後、消化管内で吸収されやすい状態に変化したり、一緒に摂取する栄養素によって吸収率が上がったり下がったりします。特に、吸収率が低い栄養素を多く含む食品と、吸収を妨げる成分を一緒に摂ると、体に取り込める量が減ってしまいます。
実際に、どのような食べ合わせが吸収率を下げてしまうのでしょうか?
鉄は、コーヒーや緑茶、ワインなどに含まれているタンニンという成分と一緒に摂取すると、吸収率が下がってしまいます。
鉄は、ほうれん草などの植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」と、レバーなどの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」の2種類がありますが、「非ヘム鉄」は吸収率が数%〜10数%と低いため、タンニンとの同時摂取に注意が必要です。そのため、ほうれん草やレバー、あさりなどの鉄を多く含む食品を摂取した際は、コーヒーや濃い緑茶などを、同時または食事前後に飲まないようにするなどの工夫が必要です。また、ビタミンCやたんぱく質は鉄の吸収率を上げるため、これらの栄養素と同時に摂取することもおすすめです。
カルシウムは、ほうれん草やたけのこ、紅茶などに含まれているシュウ酸という成分と一緒に摂取すると、消化管内でシュウ酸カルシウムという成分となり、吸収率が下がります。
カルシウムは、骨や歯を形成するのはもちろん、筋肉の収縮や血液凝固に関与するなど、体内になくてはならない栄養素です。カルシウムの吸収率低下を防ぐためには、乳製品や小魚、豆腐などのカルシウムを多く含む食品と、シュウ酸を多く含む食品を同時に摂取しないことが必要です。また、ほうれん草などは茹でることでシュウ酸が水に溶け出るため、一度茹でてから調理するのも効果的です。
亜鉛は、玄米や大豆、ナッツ類などに含まれているフィチン酸という成分と一緒に摂取することで吸収率が下がります。
亜鉛はかきや牛肉などに多く含まれており、体内で200種類以上の酵素の構成成分として利用されているため、体内の代謝を担う重要な栄養素です。フィチン酸は、玄米や全粒小麦などの外皮部分に多く含まれていたり、加工されていない大豆やナッツに多く含まれます。亜鉛を多く含む食品を摂取する場合は、それらのフィチン酸を多く含む食品を避けましょう。
特定の栄養素の吸収率を下げてしまう食べ合わせについて紹介してきました。
せっかく栄養バランスを整えても、吸収率が低ければ体内でうまく利用されないため、吸収率を下げる食べ合わせを避けて、効率よく体内に吸収できるよう普段の食事に注意しましょう。ただし、食べ合わせが悪いからと言って、すぐに栄養素不足になるわけではありません。
普段からバランスのいい食事を続けていれば、大きな問題はありません。
参考:厚生労働省 微量ミネラル 鉄
厚生労働省 e-ヘルスネット カルシウム
日本栄養・食糧学会誌 ラットにおけるカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛吸収率に及ぼす脱フィチン酸大豆タンパク質の影響
医薬基盤・健康・栄養研究所 亜鉛
中村友也
フリーランス管理栄養士。私立大学の管理栄養士養成課程を卒業後、新卒で高度急性病院で栄養管理、栄養指導に従事。栄養指導件数は300件以上。その後独立しフリーランスへ。現在は管理栄養士としての知識や経験を活かし、ライターとして健康、栄養ジャンルの記事を執筆。また、自身の体験を元にしたブログの運営やコミュニティの代表も務めている。
2025-05-09T12:17:59Z