「なんとなく悪いことが起きそう」「相手のちょっとした表情が気になる」・・・こういう “漠然とした不安” に押しつぶされそうになった経験、ありませんか?多くの人は「性格のせい」「私が弱いから」と自分を責めてしまいます。しかし、脳科学の最前線では 別の答え が出ています。不安とは、あなたの心が弱いから起きるのではなく、「脳の計算ミス」にすぎないと、最新の脳科学は説明しています。本記事では、カール・フリストン博士らの「予測符号化」という理論を、心理師の視点から解説します。
脳は目に見えたものを、そのまま受け取っているわけではありません。脳は、情報を受け取る前から「次はこうなるはず!」という予測を作り続けています。例えば階段。段差をいちいち確認しなくても足が出ますよね?あれは脳が先に“予言”しているからです。
つまり私たちは、ありのままの現実を見ているのではなく、脳がシミュレーションした“予測”を見ている。世界は “脳の予言フィルター” を通して知覚されているのです。
では、その予測が外れたらどうなるのでしょうか。階段があると思って足を出したのに、実は段がなかった…。足が「ガクッ」として心臓がドキッと跳ねますよね。このとき脳では、「予測エラー」=警報が鳴っています。
「メールはすぐ来るはず」→来ない
「上司は挨拶を返すはず」→返さない
こうした“予想外”が起きると、脳はサイレンを鳴らし、そのサイレンが「不安」ともいえるでしょう。
本来はすぐ消えるはずのアラート。でも不安が続くとき、脳のシステムに“バグ”が起きています。それは、「悪い予測」を修正せず、ひたすら信じ続ける状態。たとえば、「私はいつも人に嫌われる」という強いスキーマ(思い込みや信念)があるとします。相手が笑顔だったとしても、「これは作り笑いだ」「本当は嫌なんだろう」と、脳が“自分の予測の方を採用”してしまう。
その結果、現実とのズレ(予測エラー)がずっと続き、脳は延々と不安サイレンを鳴らし続ける。これが慢性的な不安や気分の落ち込みに繋がっていきます。
脳の予測エラーを消す方法
上司の顔色が気になり不安 → 声をかけてみる
連絡が来なくて不安 → 電話で確認する
行動することで現実を動かし、脳のエラーを強制終了させます。
現実を変えられないときは、古い予測モデルをアップデートします。
「連絡が遅い=嫌われた」
↓
「忙しいだけかも」に書き換える
現実は同じでも、脳内の“予測と現実のズレ”がなくなるため、不安は小さくなります。これがCBT(認知行動療法)の仕組みそのものです。
不安を感じるのは、あなたの脳が未来を一生懸命シミュレーションしている証拠です。予測が外れることで不安でいっぱいになっているのなら…「おっと、脳の予測が外れたな。これはデータを更新するタイミングだ。」と捉え直せると、世界との付き合い方がとてもラクになります。脳の予言を柔軟にアップデートすること。それこそが、不安とうまくつき合う鍵かもしれません。
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
2025-12-01T11:24:12Z