理由のはっきりしない発熱や皮膚のかゆみも?血液のがん「悪性リンパ腫」の意外なサインは|医師が解説

「悪性リンパ腫」とは?

悪性リンパ腫は血液中のリンパ球ががん化する病気です。

悪性リンパ腫では、リンパ節、脾臓、扁桃腺などのリンパ組織に発生するのみならず、胃、腸管、甲状腺、肺、肝臓、皮膚、骨髄、脳を含めてリンパ組織以外の様々な部位にがん病変が発生します。

  • 高齢者に多く、特に70代に多いのが特徴であり、男女比は3:2で男性の方がやや多い割合となっています。
  • 胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどよく耳にする癌に比べると、患者数は少ないといわれています。
  • 早期発見されるほど死亡率が下がりますので、早期発見が重要です。

悪性リンパ腫の種類

悪性リンパ腫にはホジキンリンパ腫と呼ばれるものと、非ホジキンリンパ腫と呼ばれるものがあります。

悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などにより50種類以上に分類されており、それぞれの症例で症状や治療法が異なります。

悪性リンパ腫は、主にホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫に分類されており、特に非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫の2種類が存在します。

ステージⅠの時点で発見・治療を開始した場合は比較的高い生存率であり、進むにつれて生存率は下がっていきます。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の治療は悪性リンパ腫のタイプ、病期によって異なっており、多剤併用の化学療法や造血幹細胞移植を実施する際にはある程度患者さんの身体的負担に繋がります。

悪性リンパ腫の種類によっては、緩徐に進行するものがあり、その際には積極的な治療をせずに慎重に経過観察することもあります。

悪性腫瘍が全身に波及していない早期の段階では、がんに放射線を照射して病変を縮小させる放射線療法のみで治療を行う場合も経験されます。

がん病巣がさらに広がっている悪性リンパ腫に対する治療は、抗がん剤や分子標的治療薬などを用いた薬物療法を実践します。

悪性リンパ腫の意外なサイン

悪性リンパ腫は血液がんのひとつです。

白血球にあるリンパ球ががん化する病気であり、首やわきの下、鼠径部、腹部、骨盤などにあるリンパ節が腫れる症状が認められます。

それ以外にも、扁桃、胸腺、脾臓などのリンパ組織、さらにリンパ外組織にリンパ腫ができる場合も見受けられます。

特に、腫れができた部位によっては、痛みや膨隆を伴う場合もありますし、悪性リンパ腫が体の表面のリンパ節などにできた場合、自分で触って疑うことが可能です。

悪性リンパ腫では、倦怠感、大量の寝汗、皮膚のかゆみなどの症状が見られます。

悪性リンパ腫の細胞から出てくる物質によって、さまざまに生じる症状(「B症状」と呼ばれる)のなかには、発熱、体重減少・盗汗(とうかん)といった、全身的な症状がみられる場合があるのです。

時々、自分の体を触って、身体のどこかの部位に腫れ・しこりがあった場合には、悪性リンパ腫を疑い、専門医療機関を受診しましょう。

また、理由のはっきりしない発熱、体重減少、大量の寝汗、倦怠感、皮膚のかゆみなどの症状がある場合は、最寄りの先生や血液内科などの専門医療機関に相談しましょう。

まとめ

悪性リンパ腫では、典型的には、頸部やわきの下、足の付け根などの部位におけるリンパ節に腫れやしこりを触ることがあります。

そもそも、リンパ節は、全身に分布しており、リンパ球は血流に乗って流れていく性質があるため、悪性リンパ腫の場合には、その病変は全身のあらゆる臓器や部位に出現する可能性が考えられます。

悪性リンパ腫が出現した部位や病状の進行速度によって、さまざまな体の症状がみられますが、全身に広がると、原因不明の発熱、大量の寝汗、倦怠感、皮膚のかゆみ、急激な体重減少など多彩な症状を認める場合があります。

悪性リンパ腫は、病型によって進行の速度や治療の方法もさまざまですので、気になる症状が悪化する前に適切な治療が実施できるように、心配な場合には、血液内科など専門医療機関を受診して、相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。

2025-06-08T11:16:25Z