爪にも現れる?意外と知らない〈糖尿病〉のサインとは|医師が解説

「糖尿病」とは?

糖尿病という病気は、体内の血糖値を下げる役割を有するインスリンというホルモンが十分に機能しなくなった状態であり、慢性的に高血糖の状態が続く疾患であると認識されています。

生体の血糖値が高い状態が長期間継続して放置されると全身の血管が傷ついて手足の血流も悪くなり、多彩な合併症を引き起こすことに繋がります。

糖尿病の主な発症原因は、血糖値を降下させる作用のあるインスリンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下したり、働きが悪くなったりすることで発症すると言われています。

本邦では、糖尿病患者さんの約9割以上が2型糖尿病と言われており、「ストレス」、「肥満」、「運動不足」、「暴飲暴食」などの日々の生活習慣の乱れが主な原因となって、インスリンが相対的に効きにくくなることでブドウ糖が細胞に十分に取り込まれなくなります。

インスリンの分泌量やその機能に異常が生じる原因としてもっとも多いのは、高脂肪、高カロリー、食物繊維不足などのいわゆる悪しき食生活習慣であり、糖質成分の取り過ぎや顕著な運動不足が続くとインスリンの抵抗性が増して徐々に血糖値が上昇します。

その他にも、妊娠を契機に発症する糖尿病や膵炎、膵臓癌など膵臓の病気と随伴して発症する糖尿病などもあります。

糖尿病の初期段階では、多くの人は自覚症状がないとされていますが、喉の渇きや尿量増加、倦怠感などが出現する場合もありますし、爪や皮膚に症状が現れる可能性があります。

「糖尿病」の意外なサイン

糖尿病では、爪に栄養が行きわたらずに、正常に伸びなくなってしまうことが原因で、意外にも巻き爪になることがあります。

巻き爪

巻き爪は爪の端の部分が内側深くに入り込んだ状態です。

巻き爪は、爪の端の部分が内側方向へ巻き込まれて周囲の爪の下に該当する部位や周りの皮膚組織を損傷しやすく、糖尿病に伴って、細菌が侵入して患部に感染を引き起こして強い炎症を起こし爪囲炎を合併することもあります。

巻き爪が引き起こされる原因としては、これまでの研究で色々なものが指摘されていますが、主たる原因のひとつは糖尿病であり、それ以外にも爪に加重される物理的外力のバランスが破綻することも一因と考えられています。

陥入爪

また、陥入爪は爪が周囲の皮膚に食い込み炎症を起こしてしまうことを指します。

糖尿病に伴って、足の神経障害を引き起こしている人は、巻き爪になっても、足の痛みや感覚の異常を感じにくいので、皮膚から出血していても放置される傾向があります。

巻き爪が放置されると、爪の状態がさらに悪化して、陥入爪から潰瘍性病変に発展して、悪循環になり、症状悪化の一途をたどる場合も考えられます。

まとめ

糖尿病は現代の疫病ともいわれていて、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気を指します。

糖尿病の原因や発症リスクから考えて、普段から規則正しい食生活、運動を心がけて、ストレスや喫煙習慣など生活スタイルに注意して糖尿病にならないように心がけましょう。

糖尿病になると身体にさまざまな変化をもたらしますが、爪や皮膚にも影響があらわれることがあります。

糖尿病が疑われる際や糖尿病と診断された場合には、動脈硬化の程度を調べる精密検査を必要に応じて受けるとともに、爪や皮膚に異常所見が無いかを見極めることが大切です。

糖尿病は治療するとしっかりと症状を制御できますので、かかりつけ医に早期的に相談して専門医から的確な診断、治療を受けるように心がけましょう。

心配であれば、代謝内分泌内科や糖尿病専門外来などの医療機関を受診して、巻き爪や陥入爪が認められた際には、皮膚科などに相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。

2025-05-03T10:14:19Z