毎日飲む職場のコーヒーが心疾患リスクに?金属フィルターの盲点を最新研究で検証

「カフェストール」と「カウェオール」が悪玉コレステロールを上昇させる

スウェーデンの研究チームによる最新調査で、オフィスで使用されているコーヒーメーカーから抽出されたコーヒーには、血中コレステロールを上昇させる可能性のある成分が高濃度で含まれていることが明らかになった。この研究は、スウェーデンのウプサラ大学とチャルマース工科大学の共同チームが行ったもので、14箇所の職場で使われているコーヒーメーカーからコーヒーサンプルを採取した。5つの一般的なブランドのコーヒーを用い、中煎りと深煎りの両方を検証した。採取は2~3週間ごとに2回ずつ行われ、合計28のサンプルが分析対象となった。調査の結果、多くの職場用マシンから抽出されたコーヒーには「カフェストール」と「カウェオール」という2つの化合物が検出された。どちらもコーヒー豆に自然に含まれる成分で、「悪玉コレステロール」とよばれるLDLコレステロールを上昇させる働きがあるとされている。

フィルターの有無が健康リスクの分かれ道

研究の主導者であるウプサラ大学のデイヴィッド・イグマン氏は、「これらの物質の存在には、コーヒーを淹れる過程におけるろ過の有無が大きく関わっている」と指摘する。「紙フィルターを使用したドリップ式コーヒーメーカーでは、ほぼ完全にこれらの物質が除去される一方、金属フィルターを使うことが多い職場用のコーヒーメーカーでは、ろ過が不十分な場合がある」と述べている。特に、調査対象となったコーヒーメーカーの中でも一般的な「ドリップ式コーヒーメーカー」や、ポットで煮出すタイプのコーヒーは、これらの物質の濃度が最も高かったことが判明した。

LDLコレステロールの上昇は心血管リスクを招く

LDLコレステロールが過剰になると、血管の内壁にプラークが形成され、動脈硬化を引き起こす原因になる。さらに、プラークが破裂して血栓ができると、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気につながることもある。イグマン氏は「職場でコーヒーを1日に何杯も飲んでいる人にとっては、ろ過がしっかり行われたドリップ式コーヒーなどに切り替えることが望ましい」と述べている。また、過去の研究では、LDLコレステロールが1.0 mmol/L減少することで、心疾患リスクが22%相対的に減少することが示されている。これは、40年の職業人生を通してみると、心疾患リスクが実に54%も低下する可能性があるという計算になる。

利点も多いコーヒーだが飲み過ぎは注意

コーヒーには健康に良い側面も数多くある。最近の研究では、1日2〜3杯のコーヒーを飲むことで、がんや認知症のリスクが低下する可能性があるほか、早期死亡のリスクを下げることも報告されている。また、体重管理に役立つ可能性があるとの指摘もある。しかし、同時にコーヒーの飲みすぎには注意が必要だ。2024年の別の研究によれば、1日に400mg以上のカフェインを摂取すると、不安感や血圧の上昇を招き、心臓の健康に悪影響を与える可能性があるという。

「コーヒーをどのように淹れるか」が鍵に

コーヒーが健康に与える影響は、飲む量だけでなく、「どのように淹れるか」によっても大きく変わることが、今回の研究で改めて浮き彫りになった。特に職場では、コーヒーメーカーが共用であるがゆえに、自分で抽出方法を選べないケースも少なくない。だからこそ、健康リスクを減らすためにも、ろ過機能がしっかりしたコーヒーメーカーを選ぶ、あるいは自宅からフィルター付きのタンブラーでコーヒーを持参する、といった工夫が必要かもしれない。職場での「何気ない一杯」も、日々の健康を左右する重要な要素になり得る。コーヒー好きなあなた、明日からその一杯を少し見直してみては?

出典:

How the coffee machine at your office may be hurting your health without you knowing

Your workplace coffee maker may be putting you at risk for a heart attack: study

山口華恵

翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。

2025-05-02T10:29:15Z