——今までやってみて合わなかった貯金・節約術はどんなことがありますか?
節約の場合ですと、自分の生活スタイルを無視した節約は合わなくて。自分の習慣は長年かけて培ってきたものなので、それを急に「これがいいから」と変えるのは大体失敗しています。例えば、今は通勤してないですが、交通費を節約するために無理をするとか、交通手段を不便なものにするとかですね。
あとは自分が本当に好んで食べているものを、グレードを極端に下げると、味が満足できなくて、せっかく安く買ったのに食べずに処分してしまったこともありました。安いことを理由に、普段通ってないお店に変えることも続かないことが多かったです。
なので、どちらかというと節約のために頑張って生活を変えるよりも、要・不要を徹底して、買ったものの中で「これはなくても大丈夫かも」というものを探して減らす方が私には合っていました。
——物価高が続いていて、ちょっとした節約では抑えきれないと感じます。どんな対策をとっていますか?
要・不要を徹底して精査していくことが基本になってしまうのですが、あとは固定費を見直せないかを定期的にチェックすることをしています。
物価高は厳しいですが、お店側も努力してくださっていて、何らかの代替品が置かれていることが多いです。なので、プライベートブランドなど安いものに鞍替えすることもあります。特別こだわりがなければ、物によっては今まで使っていたものとあまり違いを感じないこともありますので。
——「これは安いものに変えていません」というものはありますか?
利便性の問題で、本は紙を買うことが多いです。電子書籍は片付けにすごく便利で、セールしているときもあっていいのですが、読んだり見返したりするのが私はちょっと面倒くさいと思ったからです。結局紙の本の方が活用しているんですよね。あとは仕事で使うものも、安ければいいわけではなく、品質や使いやすさを重視しています。
——お金を貯められるようになることと、豊かに生きることを両立するためにどんなことを大切にしていますか?
必要なことを削るのではなく、不要なことを削ることに注視することと、短期的な視点ではなく長期的な視点を持ってお金を使うことだと思います。
短期視点だと、例えば友人の誘いを断るとか、旅行に行かないなどで削ることはできます。もし今すごく生活に困っているなら、短期視点でも削っていかなければならないと思います。
そうではなく、中長期的な貯金のためにために断っているのであれば、たとえお金がたくさんあっても、周りに人もいない、遊びに行く場所もない、趣味もないとなると、人生は寂しいものになってしまうんじゃないかって。人生を充実させるものに関しては、ある程度投資をした方がリターンも大きいのではないかと思います。
これも結局は要・不要の選別ですが、長期的な人生を意識しながらお金を使った方がいいのかなと個人的には思っています。
——今の経済力の中で、可能な範囲で投資的な行動もとるということですね。貯めるだけでは豊かにならないということですが、使う行為が浪費ではないかという視点も持っているのでしょうか?
そうですね。例えば車は買わない方が節約になることが多いと思いますが、家庭がある方だったら、家族で出かけられる選択肢が増えたり、フットワークが軽くなったりすることが、自分や家族にとって思い出作りや経験作りになるのであれば、車を高級なものにしないといった方向で節約して、車を持つことを投資として考えるといった見方です。
目先のお金を得ることだけでなく、自分が将来どうありたいかということを考えながらお金を使うことは大事だと思います。
それに、結局は人間関係があらゆる豊かさに関係してくると思っているので、機会を失わないためにも、人間関係への投資は、ある程度大切にしていきたいと思っています。とはいえ、全部誘いを受けていたらお金がなくなってしまうので、お礼をするときは惜しまないなどポイントをきちんとおさえるとか、別の形でフォローするといったことには気を付けています。
——貯められるようになると、メンタルヘルスにどんな影響があると思いますか?
お金が貯まっていないときや、ギリギリのときほど、「どうせ足りないし」とか「どうせ今からじゃ間に合わない」という思考になりがちだと思うのですが、「1ヶ月後に詰む」という状態と、「あと2、3年は大丈夫」という状態では、メンタルが全然違います。
一生分なくても、ある程度余裕を持っていることによって、対策を打てるという点で全然違うので、もし「今からじゃ間に合わない」とか「どうせ自分にはできない」と思っている人がいたら、とりあえず1ヶ月分貯めるといった小さなチャレンジから始めると、メンタルヘルスも変わってくると思います。それは今回、友人の節約を見ていても感じたことです。
——あまりにも老後を心配しすぎて極端に今の生活を削ってしまうと、それはそれで豊かさがなくなってしまいますし、かといって「老後なんて知らない」と開き直ってしまうと、それもまた大変ということですね。
そうですね。個人的には、「日々を頑張って生きる」という感じで、長期も意識しつつ、今も意識しながらでないと、蓄財だけの人生になるか、蓄財が全くできない人生になるかになってしまうと思っています。
みんな「長生きしたらどうしよう」と考えるのですが、平均寿命まで生きていられるかどうかもわからないわけですよね。だからあまり厳密に「100歳まで生きたら足りない」などと考えるだけ無駄だという気持ちも少しあって。
それにおそらく30年前に「これで一生分貯まった」と思っていた人は、今は物価も上がってしまって、一生分ないと思うんですよね。だから今一生懸命貯めて「これでもう安泰だ」と思っても、多分30年後にはそうなっていないと思うのですが、かといって、目標金額を上げれば途方もなくなってしまいます。
それよりは長期的な視点も持ちつつ、今を大事にしながら生きていくことの大切さを感じます。いつまで健康でいられるかもわからないですし。後悔のないように、短期的にも長期的にも楽しみながら生きるということを、年を取る過程で考えるようになりました。
——自分の老後には社会の仕組みも今とは変わっているかもしれないですよね。
そうなんです。今どれだけ真剣に考えたところで、この先どうなるのかを正確に知ることは誰にもできません。選挙に行くこと、政治に関心を持って悪い方向に変わらないか見ておくことや、自分の生活を守っていくための備えをするなど、個人でできる範囲のことをすることは大切ですが、その範囲を越えていることに関しては、気にしすぎないというのも必要なことだと考えています。
【プロフィール】
なぎまゆ
東京都在住。漫画家。お部屋を整理整頓ができない理由やキレイな状態を続ける方法を紹介した実録コミックエッセイ『「ちゃんとしなきゃ!」をやめたら 二度と散らからない部屋になりました』が人気シリーズに。『痩せるより大切なことに気づいたら、人生で一番楽に17kgのダイエットに成功しました』も好評発売中。
X:@naggy2018
ブログURL:https://ameblo.jp/naggy2018/
雪代すみれ
フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。
2025-06-08T11:31:31Z