最新研究が示唆【スクリーンタイム増加で学力低下の傾向】デジタル機器の注意すべき使い方とは?

新しい研究では、幼い頃のスクリーンタイムが多いほど、小学校入学後の読解力や数学のテスト結果に悪影響が出る傾向が明らかになった。

スクリーンタイム増加で学力低下の傾向

研究チームは、2008年から2023年の15年にわたり、カナダの子ども5,000人以上を対象に調査を行った。対象には、3年生(8〜9歳)の子ども3,322人と、6年生(11〜12歳)の子ども2,084人が含まれていた。保護者が報告した幼児期のスクリーンタイムをもとに、後年に実施された標準テストの成績と比較して分析が行われた。3年生では読解力と数学、6年生では数学の成績が分析対象となった。その結果、8歳未満の時期にスクリーンタイムが多いほど、読解力と数学の両方で一貫して成績が低くなる傾向が明らかになった。

調査によると、3年生の子どもは1日に平均1.6時間、6年生は平均1.8時間をスクリーン利用に費やしていた。スクリーンタイムが1時間増えるごとに、読解力と数学の高得点を取る確率が9〜10%低くなることが分かった。ビデオゲームの利用に関しては、女子生徒のほうが男子生徒よりも成績が下がる傾向が強かった。一方スクリーンタイムによる影響は作文の成績には見られなかった。世界保健機関(WHO)は、1歳未満の子どもにはスクリーンタイムを一切設けないこと、4歳未満には1日1時間以内にとどめることを推奨しているが、これは主に運動量の減少を防ぐためとされている。しかし、今回の研究では、1日1時間を超えるスクリーンタイムに幼少期からさらされることで、学力にも影響が及ぶ可能性があることが示された

今回の研究では、ゲームやビデオ通話、教育的な動画など、スクリーンタイムの内容ごとの違いは区別されていない。また、保護者が子どものスクリーンタイムについて回答するアンケートに基づいた観察研究であり、スクリーンタイムが成績の低下を直接引き起こすという明確な因果関係を示すものではない。あくまで、両者に関連が見られたという結果にとどまっている。ただし、今回の結果はこれまでの広範な研究で示されてきた知見と一致していると、オタワ大学教育学部サチン・マハラジ准教授は述べ、「スクリーンタイムは、注意の向け方が特定の形に偏るようになり、その結果長時間集中するのが難しくなる可能性があります。」と話す。また、デジタル機器に長く触れる時間が増えるほど、子どもの発達にとってより有益な活動に使える時間が減るとも指摘する。たとえば、人と直接顔を合わせて関わることや、屋外で体を動かすことなどは、学業成績の向上とも関連があることが分かっている

親を「責めたり非難したり」するためではない

研究の筆頭著者である小児科医キャサリン・バーケン医師は、この研究は子どもにデジタル機器を与える親を責めることを目的としたものではないと強調する。「これは親を責めたり、罪悪感を与えたりすることを目的としたものではありません。」と話し、子どものスクリーンタイムを健全な範囲に導くためには、保護者だけでなく、教師、医師、行政関係者が連携することが重要だと指摘している。バーケン医師は、コンテンツの種類が子どもの学習に与える影響を詳しく理解するには今後の研究が必要だとしつつ、それまでの間も親が取れる対策はあると述べている。カナダ小児科学会は、教育的なコンテンツを優先することや、親子が一緒にデジタル機器を利用することで健全なメディア利用を促すといった方法を推奨している。また、カナダのスクリーンタイムに関するガイドラインは、量よりも質を重視している。

使用時間だけでなく内容や状況にも注目

研究チームは「過度のスクリーンタイムは、子どもの脳の構造を変化させ、認知機能に影響を与え、記憶や学習の習得を妨げる可能性がある。」と述べている。「私たちの調査結果は、小学校での学力向上を目指し、スクリーンタイムやテレビ・デジタルメディアへの接触を減らすための、早期かつ的を絞ったガイドラインや介入策の開発、及び検証の重要性を浮き彫りにしている。」とし、今後、スクリーンタイムの種類やコンテンツが学習成果にどう影響するかを調べるとともに、成績表や出席状況など他の評価指標との関連も検討したいと考えている。また、現在のスクリーンタイムに関するガイドラインが依然として1日の使用時間の制限を推奨している一方で、近年はコンテンツの質や使用される場面の重要性がより明確になってきていると指摘し、スクリーンタイムの長さだけでなく、内容や使われる状況、たとえばコンテンツの質、学校での使用、家族の関わりの程度にも注目する必要があると結論づけている。

出典

https://www.independent.co.uk/news/health/screen-time-children-school-performance-b2843185.html

https://www.cbc.ca/news/canada/screentime-test-scores-9.6935108

https://www.ctvnews.ca/canada/article/higher-screen-time-linked-to-lower-math-reading-scores-in-study-of-thousands-of-ontario-students/

HIDEMI

ヨガ講師 /ヨガ翻訳・通訳者色、音、言葉が好き。同志社大学国文学科在学中は日本語学を学び、中学生の頃から独自に英語の学びを深める。サロンモデルをしながら、ジュエリーブランド、コスメブランド勤務を経て、2015年よりヨガの指導を始める。外国人講師のWSやTTの通訳、テキスト翻訳等、ヨガ関係の通訳/翻訳業も行う。

2025-10-31T10:24:12Z