放置すると命の危険に直結する病気「尿毒症」なりやすい人の特徴は?医師が解説

尿毒症とは?

尿毒症とは、腎不全の末期症状として引き起こされる可能性が高い病気であると認識されています。

腎臓機能が正常であれば、体内の老廃物や不要な毒素は尿成分として排出されますが、腎臓に障害がある際には十分な機能が果たされなくなって病状が進行するとともに、末期腎不全に陥って尿毒症という病気を発症することになります。

尿毒症は、体外へ老廃物や身体にとって不要な毒素成分を正常範囲に排出できないことによって全身に多彩な症状を引き起こします。

代表的な症状としては、倦怠感、全身浮腫、息苦しさ、食欲不振、嘔気、けいれん、貧血、不整脈などが挙げられ、初期症状としてよく認められるのは、軽い体調不良であることが多いです。

初期の段階では、倦怠感や疲労感などを自覚しやすいようになって、体調の異変を感じたのち、徐々に浮腫や息苦しさなどの症状が現れるとともに、食欲低下や嘔気、下痢や皮膚のかゆみ、視力障害などあらゆる全身の部位で多種多様な症状が認められることになります。

さらに、病状が進行すると、脳にも異常が出始めて、思考力が低下する、あるいは情緒が不安定になるだけでなく、不眠や頭痛などを合併する可能性もありますし、中枢神経領域への悪影響が大きくなるとけいれん発作などを引き起こす恐れもあります。

血液検査においても悪影響が認められることが多く、腎障害に伴って貧血所見も起こることで、貧血と関連性の高い動悸症状や労作時の疲労感なども発生する懸念がありますし、病気が進行するとカリウムなどを中心とした電解質異常の併発が認められます。

電解質が異常を示すことによって、危険な不整脈も発症する心配があります。

尿毒症に伴って、心肺機能に関連する症状として、尿毒症性肺と呼ばれるように胸腔内に水がたまって呼吸困難を呈する病気を発症する可能性もありますし、骨代謝が悪化して骨組織が脆弱になる、あるいは皮膚が黒ずむことも見受けられます。

このように、尿毒症の恐ろしさは、放置しておくと最悪の場合には命に直結することがある点が挙げられます。

尿毒症になりやすい人の特徴は

尿毒症は、腎不全の末期症状として認められる疾患です。

尿毒症は腎臓に脱水や糖尿病、高血圧などの基礎疾患をはじめとして何らかの障害が発生して、機能が低下するために引き起こされますし、それ以外にも腎機能が低下する原因としては、薬剤性、急性糸球体腎炎、尿管結石、前立腺肥大症などが挙げられます。

特に、高齢になればなるほど糖尿病や高血圧などを含めて生活習慣病の発症リスクは高まり、慢性腎不全などを引き起こして尿毒症に繋がる可能性が高いと考えられるために十分注意する必要があります。

一般的には、糖尿病や高血圧を引き起こしている人の場合には、腎機能の低下を起こしやすくなり尿毒症を起こしやすくなるため、これらの病気を患っている方は尿毒症になりやすいといえるでしょう。

一方で、尿毒症は、様々な要因に伴う腎不全によって引き起こされる病気でもあるため、一概に罹患しやすい方というのは断定しづらいといわれていて、一概に年齢や性別で尿毒症になりやすい方を確定することは難しいと考えられています。

まとめ

尿毒症とは、尿によって体内の老廃物や毒素を排出できず、そのまま体内に蓄積してしまう病気です。

尿毒症は、腎機能の低下により誰しもが発症する可能性があり、その発症原因や病気の進行度によって治療方法も異なります。

尿毒症に対する最も効果的な予防方法は、腎臓病の病状を進行させないことです。

糖尿病、高血圧、痛風、妊娠高血圧症候群などの状態によって腎機能の低下が起きると腎不全を発症し、そのまま悪化すると慢性腎不全となり尿毒症を引き起こすリスクが上がるため、まずはこれらの状態にならないことが必要です。

そのためには、食生活の改善と適切な運動が重要であり、すでにこれらの病気にかかってしまっているようであれば、より一層腎機能低下を起こさないための食事管理や生活習慣の改善を図ることが、予防に繋がります。

腎不全の末期症状として出現する尿毒症が現れた際には、非常に重篤な状態と考えられますので、普段から、腎不全や尿毒症の状態を悪化させないためにも、日々の生活における対策や疾患リスクなど適切な医学情報を身につけておきましょう。

心配であれば、腎臓内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。

2025-02-02T10:51:49Z