平日大阪⇔週末 多可町。子供3人連れての二拠点生活 #暮らしの選択肢

今回、お話を伺った二拠点生活者は、大阪市内と兵庫県多可町で生活をされてるMichikoさん。夫とMichikoさん、そして3人の子供(小学校6年生、小学校3年生、年中)の総勢5人で、平日は大阪、週末は山の家を行き来されています。子供を3人連れての二拠点生活はかなり大変なのでは?一方で、Michikoさんは、「子供にとってのメリットは大きい」と話します。どういったメリットがあるのでしょうか。Michikoさんの二拠点生活に迫ります。

***********************************

〈プロフィール〉Michiko

大阪⇔兵庫県多可町で、二拠点生活。

生まれ育った大阪に加えて、2024年に念願だった「山の家」を購入。

サウナ小屋を手作りするなど、週末の山暮らしをエンジョイ中。

現在は、夫婦と3人の子供と一緒に、多可町の山の家にトレーラーハウスを持ってきて、民泊をする計画を進行中。

Instagram: @michiko1010 / @a_berghutte 

***********************************

「山小屋に住むなら完全移住」そう思っていたけれど...?

– Michikoさんの二拠点生活のきっかけについて教えて下さい。

Michikoさん: 一番最初のきっかけは、結婚10周年の時に、旅行して素泊まりした長野県の一軒家でした。私たちは、もともと旅行が好きで、それまでも毎週末キャンプに行ったり、長い休みの時は、少し遠出の旅行をしていたんです。結婚10周年の時は、特別な場所に宿泊したかったため、思い切って前々から気になっていた長野県の一軒家に泊まることにしました。それまでは、旅行というと、ホテルに泊まることがほとんどで、それが私たちにとって初めての民泊だったんです。それが、すごく良かったんですよ。暮らすような旅ができた感覚があって。長野県の山の中の家で、環境もすごく良かったですし。それで「いずれこんな山小屋みたいなところに暮らしたいね」という話になって、夫婦の夢ができました。ただ、私的には、それは子供が大きくなってから移住というイメージでした。

– それが、3人のお子さんを連れて二拠点生活になったのはどうしてでしょう。

Michikoさん: 夫は、その日から、2年間毎日、山荘サイトを調べていたんです。どうやら、彼が憧れている方が二拠点生活をしている人だったらしく、夫の中では最初から二拠点生活という選択肢があったようです。ただ、私としては、お金もかかるし、子供もいるし、最初は乗り気ではありませんでした。実際、夫に説得されて滋賀県の琵琶湖周辺にある山荘を何件か見に行ったりもしたのですが、予算的にも合いませんでした。予算内のものは、廃墟のようなボロボロの家だったりして。なかなかマッチする物件に巡り合うことができませんでした。それで、次に彼がとった行動は、エリアを広げて探すことだったんです。しばらくして、兵庫県の多可町で物件が見つかりました。彼が先に見に行ったのですが、「本当に良いから、ぜひ見に行こう」とまたもや説得されまして、子供たちと見に行ったら、そこがあまりに素敵すぎて、私も本気で気に入ってしまったんです。

 

– 物件に惚れ込んだわけですね。

Michikoさん: そうなんです。でも、まさか本当に買えるなんて思ってもいなくて…ダメ元でめちゃくちゃな値段を不動産屋さんに交渉したら、まさか通ってしまったんです。それで、慌てて資金を準備して契約、購入に至った感じですね。

– 物件のどんなところに惚れ込んだのでしょうか?

Michikoさん: 森の中にポツンとある家で、環境が良かったということはもちろんのこと、前の家主さんが丁寧に使われていて、掃除したらすぐ使えるという状況でした。と言うのも、私たちが購入する2年前にリノベーションされたばかりだったんです。だから、リノベーションの費用がカットできたというのはかなり大きかったですね。

– 環境的にも金銭的にも合致して、運命的な感じだったわけですね。

Michikoさん: そうですね。正直、直感で決めました。見た瞬間「ここで暮らしたい」と思っちゃいました。

– お子さんたちの反応は何かありましたか?

Michikoさん: 子供たちもすごく気に入ってくれました。私たち夫婦はふたりとも、出身が大阪市内同士で、都会育ちなんです。だから、夏休みとかにおばあちゃんの住んでいる田舎に遊びに行く、川で遊ぶというようなことができなくて。だけど、すごく自然が好きで、10年くらいキャンプを続けてたんです。そういった経験を子供たちも小さい内からしているため、自然の中で遊ぶことは大好きなんです。だから、実際二拠点生活をはじめてからも、すごく楽しんでくれています。大阪とは全く違うライフスタイルになるので、ある意味刺激になるようですね。自然の中で過ごす時間もそうなのですが、家の塗装をしたり、家の周りにブランコを作ったり、友達に手伝ってもらってサウナ小屋を手作りしたり、大阪では絶対にできないような非日常な体験ができるので喜んでやっています。都会では出会わないような、よく分からない虫もたくさん出て、ギャーギャー叫んだりすることもありますが、それに対応する力がついてくれたらとも願っています。

子供も一緒に、サウナ小屋を手作り

– 今は毎週末、多可町に行っているのでしょうか?

Michikoさん: 仕事や何か行事がない時は、週末は多可町に滞在しています。

– 大阪と兵庫県だと距離は比較的近いですよね?

Michikoさん: はい。車で一時間半くらいですね。なので、金曜日の夜に仕事が終わってから出ても、遅くとも22時くらいには着きます。車に乗っている間、子供たちは寝落ちしてくれるので、家よりもスムーズだったりします(笑)

– 一番上のお子さんが6年生だと、例えばお友達と遊ぶ約束とぶつかったりするなんてことはないですか?

Michikoさん: ありますね。そういう時は、おばあちゃんの家に泊めてもらっています。もう6年生であれば、一人で泊まれるので。実家が近いのが本当に助かっています。

– 上手く回る環境が整っているんですね。多可町に行かれる時は、どのように過ごされることが多いのですか?

Michikoさん: 多可町という場所が、本当に魅力的な街なんですよ。例えば、無農薬野菜レストランがあるのでそこに出かけるのが楽しいです。また、道の駅に並んでいる野菜や果物もオーガニックなものが多く、そういう地元の食材を使って料理をしたり。あとは、地域のイベントも盛んで、例えば田植え体験にこれまで参加しました。田植え体験をしてから知ったことなのですが、多可町は日本酒も有名なんだそうです。あとは、マルシェも毎週末開催されています。小さな川とかがあるので、夏場はそこで川遊びをしたり魚や蟹とか捕まえたりして過ごしました。

– 環境が活かされた過ごし方ですね。

Michikoさん: そうですね。あとは、この2年は友達に手伝ってもらってサウナを作ったり、倉庫を片付けたり結構やることも多くて、正直な話バタバタしていました。そして、今は家の隣の土地を購入することになったんです。そこにトレーラーハウスを置いて民泊をしようと計画中なので、その準備に追われている感じですね。

– かなりお忙しそうですね。都会と田舎暮らしを両方やると、田舎に行けばオフになるのかなと思いきや、逆になんかやりたいことがいっぱい出てきちゃった感じですか?

Michikoさん: そうなんですよ(笑)常に忙しい。本当は、ゆっくり本とか読みたいんですよ。そのために家を購入したんですけど。もちろん、ボーッとゆっくりする時間もあるにはあります。サウナをして、自然の中で休憩する時間とかは、何にも変えられない贅沢な時間です。それに電波もあまり良くないので、スマホやゲームを置いて、プチデジタルデトックスをしたりすることもあります。

– いいですね。でも、そもそもサウナが手作りできるなんて知りませんでした。

Michikoさん: 私もそんなことできるわけないと思っていました(笑)けれど、友人でDIY好きな子がいて、彼が手伝うと言ってくれたので、大丈夫?と思いながら頼んだんです。基本的には、友人と夫主導で作ったのですが、子供たちも手伝えるところは一緒にやって。その工程も子供たちにとっても結構刺激的だったようですね。木を切るだとか、釘をうつだとか、壁の色を塗ったりだとか。みんなで一緒に一つのものを作り上げるという目標を持って、実際に作り上げたときの喜びを共有できたのは、すごく良い体験になったと思います。もちろん、頼んだほうが簡単なんですが、そもそもお金もかかりますし、だけど、愛情を込めてみんで作り上げたという方が、愛着も湧くと思っています。実は、私はそれまで全然サウナとかに興味もなかったんです。水風呂も全然入れない人だったんです。だけど、これがきっかけでサウナの魅力を知って、今では毎週末の山の中のサウナが楽しみの一つになっています。

– 山の中のサウナは、憧れます!きっと贅沢な時間でしょうね。

Michikoさん: そうなんです。本当に森の中にポツンとあるという感じなので、休憩中は自分が森に溶け込んで、山の一部のような感覚になりますね。夜は、全く光がないので、夜空の星の光だけで、それも特別です。

山の上では、スムーズにコミュニケーションができる

– 大阪と多可町の一番違うところは、どんなところだと思いますか?

Michikoさん: 景色ですね。多可町の方は、森の中にポツンと家が建っているだけなので、カーテンをあえて付けていないんです。だから窓から見える景色がグリーン一色。目に入るところがすべて自然です。大阪の家は、スリガラスにしているので、そんなことはありえないですし。

– グリーン一色の景色は癒やされるでしょうね。

Michikoさん: はい。あとは、家族のマインドも違うと思います。大阪にいる時は、大阪にいる時は気忙しさを感じることもありますが、森の中に入るとみんながフラットになるというか。専門的なことは分からないんですが、「なんか周波数が出てるのかな?」と思うぐらい、自然とリラックスできますね。それは、やはり見える景色だったり、あとは耳に届く音も違うからなのかなと思います。風の音だったり、川の音だったり、自然の音しか耳に届かないので落ち着くのかな。だからなのか、大阪にいる時よりもスムーズにコミュニケーションできている実感があります。

 

– 子供たちの喧嘩も少なくなるとか?

Michikoさん: そういうことですね。あとは、子供たち同士の関わりが増えますね。大阪にいるとそれぞれやりたいことがあるから、各々ゲームをしたり、友達と遊んだり、スマホを見たり、みたいな感じです。けれど、山の上に行くと、必然的に子供たち同士で遊ぶんですよ。そういう時間は、小さい頃は結構大事かなと思っていて。いずれ絶対に遊ばなくなるじゃないですか。特に、一番下の子がすごく嬉しがっていますね。大阪だとあまり相手してもらえていないのが強制的にコミュニケーションとるきっかけになっているので。二拠点生活をはじめる前は、あまりこういったことは考えていませんでしたが、これは意外なメリットだったと思っています。

– 子供たちの絆が深まっているわけですね。多可町で暮らすようになって、大阪に対しての見方や価値観に変化はありましたか?

Michikoさん: あります!私は、生まれも育ちも大阪で、もうめちゃめちゃ大阪愛が強い人間でした。だから、結婚をして家も実家からすぐの場所に買って、生涯ここを離れるなんてないと思っていたんです。だけど、今はチャンスがあるならすぐにでも多可町に完全移住して良いと思っています。もちろん、子供の学校などの兼ね合いもあるので、現実的には二拠点生活でやっていくと思うのですが、私たち夫婦はしがらみがないならすぐにでもこの家を売って、多可町に住みたいと思っています。今は、多可町のことを第二の故郷のように感じています。

– その心境の変化はかなり大きいことだと思うのですが、どこから来ているのでしょうか。

Michikoさん: もちろん大阪は便利なんですよ。コンビニも歩いていけるし、何でも揃ってるんで。本当は大阪の方が豊かなはずなのに、多可町で暮らす週末の方が心が萌えるんですよね。山の家の方には、テレビも置いてないですし、電子レンジも置いてないですし、不便なんです。だけど、楽しいんです。ご飯も山の上にいる方がすごい頑張って作るし(笑)不思議なんですけど。

– 不便だからこそ色々工夫しなきゃいけないから、それが楽しかったりするのかもしれないですね。

Michikoさん: そうかもしれないです。それに、山の家だと、発見の連続なんです。森の中に生えている植物を食べてみようとか、ドクダミを見つけたら煮出してみようとか。大阪だけに住んでたら知らなかった世界が山の中には広がっていて、それがすごく刺激的ですね。家の周りにスギノキがあるのですが、去年のクリスマスはそのスギノキでリースを作ったんです。それまで、クリスマスリースについて深く考えることなんてなかったのですが、リース作りをしたら、「そもそもリースにはどんな意味があるの?」と考えるようになって、調べてみたり。

 

– 確かに、都会にいるとあまりにも色々なことが溢れているので、一つ一つのことに集中できず、いつの間にか通り過ぎてしまうことは多いかもしれませんね。大阪と多可町での暮らしは、かなり違ったライフスタイルだと思うのですが、切り替えは上手くできるものですか?

Michikoさん: そうですね。なんなら、多可町での暮らしが待っているから、大阪での暮らしも頑張れたり、自然の中でもらったパワーを上手く分散できるようになったような気がします。

– もしかしたら大阪で生まれ育って、都会での暮らしを知っているからこそ、多可町の魅力がすごく分かるのかもしれませんね。

Michikoさん: それもあるかもしれません。大阪の友人で、地方から出てきた子たちからは、「えっ?どうして?」と驚かれてますね(笑)

 

>>後編へ続く

 

※本記事に登場する民泊計画や設備設置は、関係法令・条例・ガイドラインに基づき、所要の手続き・安全対策を確認のうえ進めています。

桑子麻衣子

1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。

2025-10-31T09:09:03Z