今回、お話を伺った二拠点生活者は、大阪市内と兵庫県多可町で生活をされてるMichikoさん。夫とMichikoさん、そして3人の子供(小学校6年生、小学校3年生、年中)の総勢5人で、平日は大阪、週末は山の家を行き来されています。現在は、多可町に新しく土地を購入して民泊を運営する計画を進行中。子供を3人連れての二拠点生活に加え、民泊計画を進めるのはかなりの重労働なのでは?そんな中、Michikoさんが二拠点生活を送る上で、大切にしている考え方についてお伺いしました。Michikoさんの二拠点生活に迫ります。
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〈プロフィール〉Michiko
大阪⇔兵庫県 多可町で、二拠点生活。
生まれ育った大阪に加えて、2024年に念願だった「山の家」を購入。
サウナ小屋を手作りするなど、週末の山暮らしをエンジョイ中。
現在は、夫婦と3人の子供と一緒に、多可町の山の家にトレーラーハウスを持ってきて、民泊 をする計画を進行中。
Instagram: @michiko1010 / @a_berghutte
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– 現在は、山の家の隣の土地を購入して、 民泊計画をされているんですよね。
Michikoさん: はい。そもそもどうして、民泊をやろうかと思ったかと言うと「この景色をみんなにシェアしたい」という思いが芽生えたからなんです。どの景色も本当に息を呑むほど美しいのですが、特に私たち夫婦のお気に入りなのが、朝の森の景色です。その景色を見ながらコーヒーを飲む時間は格別。特に、私たちの山の家の隣の土地からは、かなり遠くの山まで見えるんですね。それで、調べたところ、その土地は多可町の所有地だったんです。知り合いになった地元の方に紹介していただいて、話し合いを重ねて、購入に至りました。
– すごい、行動力ですね。そういう思いが芽生えても、行動に移すことはハードルが高いと思います。お金も体力も必要になりますし。ましてや、3人も子供がいて、それができるのは本当にすごい。そのモチベーションはどこからくるのでしょうか?
Michikoさん: 自然の中で過ごす尊さを身を持って感じているというのは大きいと思います。
私たちは、多可町に住むより以前にキャンプを通して自然の中で過ごすことの豊かさをずっと感じていました。だから、キャンプをする人がもっと増えたらいいなと思っていたんです。けれど、キャンプのハードルが高いということもよく分かっていて。キャンプ道具を一から揃えるのも大変だし、楽しいけどトラブルも付き物だし。けれど、私たちの山の家を利用するのであれば、キャンプよりかはハードルを下げて自然の中で過ごすことができるのではないかと思うんです。山の家が、自然の中で過ごすきっかけになったらいいなと思っています。
あとは、地元のイベントに参加して、多可町の方々との交流を深めていく中で、本当に素敵な街だなと思ったのも大きいかもしれません。自分たちだけでなく、多可町のことをもっと知ってほしい。大阪が地元なのに、勝手に多可町のアンバサダーをやっている感じです(笑)
– (笑)いいですね。民泊の進捗状況はいかがですか?
Michikoさん: 今は、地盤を整えることに着手しています。傾斜なので、車両を置くために平らにしないといけないんです。先日、業者さんに土の設置とセメント・コンクリートを流してもらいました。今は友人に手伝ってもらって地盤の型枠に取り掛かっています。ありがたいことに、彼はプロとしてそういう仕事をしている人なので、力を貸してもらっています。地盤が整ったら、トレーラーハウスを牽引して持ってきます。そこから、中の内装やウッドデッキ作りを進めていこうと思っているところです。
– 業者さんに頼むところは頼んで、けれど自分たちでできるところは自分でもやっているわけですね。
Michikoさん: 自分でも、たまに「何をやってるんだろう?」とふと我に返ることがあります(笑)友達からも「非日常の話」と言われたり。正直、後先のことはあまり考えていなくて、今を生きるという感じですね。直感的に動いています。
– ご夫婦で向かってる先が同じだから、良いですね。励まし合えるのではないでしょうか。
Michikoさん: そうですね。趣味というか、興味があるものが同じなので良かったです。山の家を整えていく時も、自分たちでプロデュースしていく感じがすごく楽しかったんですよね。もしかしたら、それがまたやりたいというのもあるのかもしれないです。もう、山の家はできてしまったので。
– 民泊を本格的にはじめるとなると、完全移住の可能性も高まってくるのでしょうか?
Michikoさん: それは、まだはっきりとは決めていないんです。民泊をして、特に儲けたいというわけでもなく、月々のローンの足しになったらいいなという感覚なので。今後のそのビジョンは全然見えてないのですが、月に数回予約が入ったら、その時に行ってという感じですかね。今の仕事に支障ないペースでできたら、いいのかな。
– 二拠点生活をはじめる前にイメージしてたことと、実際に体験してみてからのイメージが変わったことはありましたか?
Michikoさん: それはないかもしれないです。と言うのも、実際、毎週キャンプを行ってたんです。周りからびっくりされるくらい、毎週子供連れて、外で寝てた感じで。だから、寝袋や湯たんぽなしで、家の中で寝れるようになったので、アップグレードしたと思っています(笑)子供が生まれてから、毎週過酷なサバイバルしていて、行き着く先まで行き着いちゃった感じで、この生活をはじめたんです。
– ある程度自然の脅威のようなものに耐性があったということですかね。
Michikoさん: そうですね。キャンプで毎週末外で過ごしていた経験がベースにあったのは大きかったと思います。こういう時は、こうすればいいというのも分かっているし、自然の中でのルーティンのようなものも確立していました。それに、キャンプ道具がすでに一式揃っているのも大きかったですね。焚き火をするんだったら焚き火台もあったり、キャンプ用のキッチン用具もあるし。だから、山の家のために新たに買い揃えたものは、ダイニングテーブルくらいだったんです。
– すでに持っているものを活かして生活をはじめたということですね。今、二拠点生活をする上で大切にされている考え方はありますか?
Michikoさん: 「手放す」ことじゃないかな。山の家にいる時は、自分と家族のために過ごすような時間にしたいというのがあるんです。だから、それ以外のことを優先しないようにしています。大阪にいると、仕事や家事など色々なことに追われてます。それは、大阪での生活。だけど、山の家で過ごす時間は、そういった自分の役割のようなものを一旦手放すようにしています。特に、大阪にいる時は仕事に集中していることが多く、なかなか子供たちとの時間も充分にとれないこともあって。けれど、山の家に行くと、家族で同じ時間を過ごすことを優先するようにしていますね。
– オンオフじゃないけれど、使い分けが出来ているわけですね。
Michikoさん: そうですね。あとは、キャンプをしていた頃からそうだったのですが、基本的に滞在先には「お邪魔する」という感覚を持つようにしています。子供達にも「ここは、虫さんのお家だから、そこに私たちがお邪魔しているんだ」というマインドを持つように伝えてきました。もちろん、見たことのないような大きな虫が出たら、ぎゃーとなってしまうこともありますが、そういうマインドを持っていれば、受け入れやすくなると思うんです。いろんな発見を楽しむことにもつながると思いますし。今は、山の上に行ったら、必ず家に挨拶してます。「ありがとう。今日もよろしくね」とか「また、会おうね」という感じで。もう山の家が家族の一部というように思っているので。
– 確かに、お邪魔しているというマインドを持っていると、大小関わらず、どんなことに対してもポジティブに受け取れるし、それこそ手放すことにつながりますね。
Michikoさん: そうですね。去年、雪がかなりつもった時期があったんです。それで、車もスタッドレスタイヤにはしていたのですが、滑り落ちてしまって、大変なこともあったんですよね。だけど、それも「こういうことがなければ、レッカー車を間近で見ることできないよね」というように受け入れることができましたね。
– 都会にいると、どうしてもコントロールすることが当たり前になってしまって、ハプニングに対して動じてしまうことが多いような気がします。もちろん、都会にしても落ち着いて対応できる方も多いのでしょうが、便利すぎるがゆえに、人間の力でどうにかしてしまおうとすると言いますか…。
Michikoさん: そうですね。大阪にいると、 便利だし、何でも揃ってるし、そんなに困ったことなんて起こらないんですよね。だからこそ、子供たちに、山の上でハプニングやピンチなことを乗り越える力をつけてほしいなと思ってます。
– これまでの2年間を振り返ってみて、苦労したことなどはありますか?
Michikoさん: 空き家の期間があったので、実際に生活をはじめるまでは大変でした。キャンプで慣れていたとはいえ、見たことのないような虫とか、ものすごい大きなムカデが出たりして。みんなで、ギャーギャー言いながら、大掃除をしました(笑)あとは、大雨の日に行った時に、雨漏りがしたり。けど、苦労話ではそれくらいかな?と言うのも、契約をして鍵をもらってから、生活をはじめるまでの期間は1ヶ月間だったので。しかも、その期間に掃除に行ったのは2回だけなんです。掃除をしちゃえば、すぐに使える状態で。トイレもお風呂も不具合なくすぐに使えたので、そこはやっぱり大きかったかもしれないです。
– 山の家だと、夏の間、湿気がすごいという話を耳にしたことがあったのですが、湿気やカビで困ったことなどはありませんか?
Michikoさん: 湿度が高くて、結露ができたりということはありますね。だから、倉庫があるのですが、そこに閉まっておいたものがカビてしまうということはありました。今は、もう逆にそこに椎茸の木を置いて育てているんですよ(笑)
– 湿度をどうにかしようではなく、湿度を活かすわけですね!
Michikoさん: そうですね。仕方ないかな、と思って。どうにかしようと思うと苦しくなってしまいますし。
– それも、手放すマインドが活かされているのかもしれませんね。二拠点生活をはじめて良かったことはどんなことですか?
Michikoさん: こういう生活がしかったかということが分かったのは良かったことの一つですね。二拠点生活を通して、自然との調和する時間が自分には不可欠だということがすごく分かりました。それもこれも夫のおかげです。私だけだったら、絶対考えないですもん。「山の上で暮らす=移住」としか考えていなかったので。あとは、ワクワクしたり楽しいと思うことが本当に大きいです。大阪だけに住んでいたら知らなかった世界を今は見たり、体験できていることが嬉しいです。
– 人生の楽しみや夢が膨らんでいっているわけですね。これからも、しばらく二拠点生活を続ける予定ですか?
Michikoさん: そうですね。今は子供たちの学校のこともあるので、しばらくはこの生活を続けると思います。いずれ、私と夫は多可町に完全移住する、あるいは別の場所を持つのもいいなと思っているんです。夫は、将来的には農業もしたいと話していて。やりたいことは、まだまだたくさんあります!
– これからが楽しみですね!
Michikoさん: そうですね。まずは、今は民泊計画をしっかり進めていきたいと思っています。特に、都会や都市に住んでいる方が、自然の中での生活を、ハードルを低くして、体験してほしいという思いが強いので。自然の中で過ごすことの素晴らしさをもっとたくさんの人にしってもらいたい。そのきっかけになれたら、いいなと思っています。
※本記事に登場する民泊計画や設備設置は、関係法令・条例・ガイドラインに基づき、所要の手続き・安全対策を確認のうえ進めています。
桑子麻衣子
1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。
2025-10-31T09:08:52Z