病気になると、さまざまな身体的な症状が出てくるかと思います。
その中でも、生死に関わるわけではないけれど、少しずつ心を蝕んでいくのが「見た目の変化」だと思います。
見た目の変化は、アイデンティティがなくなっていくようで怖くて、心に大きなダメージを与える気がします。
私も2年前にPTSDになってから、見た目の変化に心が揺れ動きました。まず一番最初に出てきた変化が体重でした。
1ヶ月で5キロほど体重が落ち、あっという間に肋骨が浮き出してきました。
元々身長165センチ、体重51キロぐらいだったのですが、最終的には42キロ台になって、着ていた服はブカブカになりました。
これまでの人生では、「ダイエットしなきゃ!」が口癖で、痩せていることが美しさの条件の一つだと思っていました。
痩せたら綺麗になれると信じていたけれど、実際に痩せたら、全く美しくなくて。不健康で貧相な身体の自分を見て、虚しさで心を占めました。
昨年仕事を再開してから、SNSで「アナウンサー時代と顔が変わった」「顔いじった」「絶対整形した」などと言われました。
これらの言葉はかなりショックでした。
断じて整形はしていません。病気療養中に、顔を整形できるほどの体力も気力もありません。
自分でも、顔が変わったことは認識していて、特に輪郭や目の周りの脂肪がなくなって窪んでしまったことに「前の自分とは違う」と落ち込んでいました。それをSNS上の顔の知らない相手から「整形」という言葉を浴びせられ、まるで心を刺されたように痛みました。なりたくてなったわけじゃない今の自分の姿をさらに否定されたように感じましたし、あまりにも的外れな言葉と、でも傷つけようとする意図だけは感じられて、さすがに悲しくなりました。
元の体重の17%も痩せたら、人間の顔は変わるものです!
私に整形という言葉を投げてきた人たちには「実世界でそんなことを絶対に言ってはいけませんよ!」と伝えたいです…(本来はインターネット上でも言ってはいけない言葉だと思いますが)。
変化の2つ目が髪の毛。
私の場合、ストレスと薬の影響で髪の毛が抜けてしまいました。ベッドから起き上がると枕に大量の毛が落ちていたり、ちょっと手ぐしするだけで指に信じられない量の毛が付着していたり…「ネットで調べたPTSDの症状に、髪の毛抜けるなんてなかったじゃん!!!話が違うじゃん!!!」と何度も泣きました。抜けた髪の毛を見ると、その毛の分どんどん自分がいなくなっていく感覚でした。この文章は、当時の日記から引っ張ってきました。「話が違う」と思ってしまうくらい、受け入れられなかったのでしょうね。抜け毛を見るのがあまりにつらかったので、生まれてからずっとロングだった髪型をショートカットにして、ぱっと見て抜けている量を少なく見せることで、精神的ダメージを減らしました。
そして私が一番苦しんだ変化が、皮膚の炎症でした。
元々アレルギー体質で光線過敏だったのですが、食事がとれなくなっていたりストレスが溜まったりしたことで抵抗力が落ちてしまい、炎症が悪化しました。
鏡を見ると、皮膚がただれ、全身には蕁麻疹が広がり、その患部から体液がにじみ出ている自分が映って、「これが1〜2週間前までテレビに出ていた人間なのか?」と私自身も疑うほどでした。
蕁麻疹など皮膚の炎症は意外と体力を消耗するので、本当に疲れるのです。それらの炎症を抑えるための点滴が眠気を引き起こしてしまい、ベッドで寝て過ごす時間が必然と長くなりました。できないことが増えていき、この先元気になるビジョンがみえず、自信がどんどん失われました。
これら見た目の変化は、他者から見たらたいしたことでないように思えるかもしれません。ですが、病気の主症状ではないけれど、当事者には自分が自分じゃなくなる喪失感や恐怖をもたらし、二次的に苦痛を与えるものだと思います。
そんな中で、私が徐々に自分を取り戻すためにした行動が主に3つあります。
1つは、同じ悩みをもつ人とつながること。
私はInstagramをやっているので、そこで自分の現状や困っていることを発信し、同じ悩みを持つ人と繋がってみました。すると想像以上に仲間がいることがわかりました。アドバイスをいただけたり、気持ちを吐露したりできました。月並みですが、一人じゃないと思えたことが私の心の大きな支えになり、健康になる希望を見出せました。
2つ目は、ちょっとしたおしゃれをすること。
体力が少し出てきたら、髪の毛をかわいいピンで留めてみたり、色付きリップを塗ったり、ベッドの上でもできるおしゃれを始めました。たったそれだけのことでも当時の私には大きな一歩で、鏡の中で「元気そうに見える自分の姿」が、さらに自分にパワーを与えてくれました。特に、髪の毛をトリートメントした感動は強く記憶に残っています。髪の毛がつるんとして輝くだけで、「私、頑張って生きている!」と思えて、なくなりかけてた自信を少しずつ取り戻すことにつながりました。
3つ目が記録すること。
本当なら見せたくない自分の姿をあえて写真に残したり、心の中の思いを日記に書き出したりして、記録しました。そうすることで感情を整理し、今何に悩んでいるのかクリアになって心が落ち着いたり、現状を人生という大きな物語の1〜2ページのように捉えられ、今の自分の姿をちょっとずつ許せるようになりました。いつか元気になった時にこれらを見返したら、きっととても勇気をもらえて、こんなに頑張れた自分を誇らしく思うだろうと淡い期待を込めて始めた記録たち。今では闘い抜いた証と自分への勲章になりました。
私がやってみたものが全ての皆さんに効果があると断言できませんし、やるべきだと押し付けるつもりもありません。ただ、私と同じように見た目の変化に悩む方へ、何らかのヒントになったらいいなと思っています。
読者のみなさんには、もっと自分を甘やかして生きていいんだよと伝えたいです!
ボロボロになっても頑張って生きている自分に、誇りをもってください。
見た目が変わっても、あなたの内面や信念は変わりません。
むしろ痛みを知る人は、さらに美しく、強くなれます!
時には頑張る自分を労って、優しくハグしてあげてくださいね。
渡邊渚
4月13日生まれ、新潟県出身。慶應義塾大学を卒業後、株式会社フジテレビジョンに2020年に入社。2024年8月末に同社を退社。現在はフリーで活動中。
2025-10-30T11:09:02Z