数値のカギになるのが、Lp(a)(リポ蛋白a) という少し聞き慣れない物質。
これは通常の健診項目には含まれておらず、LDLが正常でも、動脈硬化リスクを押し上げる“隠れ要因”として注目されています。
「生活習慣もそこそこ気をつけている」
「脂質の数値は昔から問題ない」
それでも、心筋梗塞や脳梗塞を若くして発症する人がいる。その背景に、このLp(a)が潜んでいることがあるのです。
Lp(a)は、ざっくり言うとLDLコレステロールに、アポ(a)というタンパク質がくっついたもの。この“くっつきもの”があるせいで、ただのLDLよりも性質が悪くなります。
何が問題かというと、動脈硬化にとって三拍子そろった存在だという点。
しかも厄介なのが、Lp(a)は食事や運動ではほとんど下がらないこと。値の多くは遺伝で決まり、「痩せている」「健康的な生活をしている」人でも高いことがあります。
こんな特徴がある人は、Lp(a)が高い可能性があります。
⚫︎ 家族に心筋梗塞や脳梗塞の人がいる
⚫︎ 若い頃に血管の病気を起こした家族がいる
⚫︎ 自分は脂質正常なのに、動脈硬化を指摘された
⚫︎ 原因不明の狭心症や心筋梗塞を起こした
「遺伝体質」というとどうしようもない感じがしますが、知っているかどうかで、その後の対策は大きく変わります。
「じゃあ、調べたほうがいいの?」
答えは、リスクがある人は一度は測ってみてもいい、です。
Lp(a)は血液検査で測定できます。保険適用になるケースもあり、循環器内科などで相談可能です。
もし高値だった場合、「下げる薬がないなら意味がないのでは?」と思うかもしれません。でも、そんなことはありません。高Lp(a)がわかれば、“先回りの対策”が取れるようになります。
最近では、Lp(a)を下げる新しい治療薬の研究も進んでおり、「何もしない」より「把握して備える」ほうが、将来的なリスクを確実に下げられます。
健診の脂質が正常。――それは確かに良いニュースです。でも、それだけで血管リスクがゼロになるわけではありません。
・家族歴がある
・若くして心血管イベントを起こした身内がいる
・説明のつかない動脈硬化がある
こうした人は、高Lp(a)血症という“見えない要因”を一度疑ってみてもいいかもしれません。
健康診断は「異常を探す場」ですが、本当の目的は「将来の病気を防ぐこと」。見えにくいリスクに気づけた人ほど、長く健康でいられる可能性が高くなります。
「脂質は大丈夫だから安心」。その一歩先にある視点として、Lp(a)を知っておく。それが、血管を守る新しい常識になりつつあります。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
2026-01-07T10:09:11Z