今から血糖管理を始めよう!将来の糖尿病を防ぐための生活のポイントとは|管理栄養士が解説

糖尿病ってどんな病気?

糖尿病とは、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気です。主に、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌不足や、分泌されていても効きにくくなることで起こります。血糖はエネルギー源として大切な存在ですが、常に高い状態が続くと、血管や神経にダメージを与えてしまいます。また、糖尿病の初期にはほとんど自覚症状がないため、気づかないまま進行してしまうことも少なくありません。

糖尿病を引き起こす要因

糖尿病の主な要因には、大きく分けて「生活習慣」と「遺伝的な要因」の2つがあります。

糖尿病の原因となる可能性のある生活習慣としては、

・過体重・肥満(特に内臓脂肪型肥満)

・運動不足

・糖質の過剰摂取や、脂質の摂りすぎによる肥満

・食事の時間が不規則

・喫煙・過度な飲酒

・ストレスの多い生活

などがあります。

また、家族に糖尿病の人がいる場合などは、遺伝的な要因から糖尿病になるリスクがあると言われています。

特に、40代以降になると基礎代謝が落ちて太りやすくなったり、運動の機会が減ったりすることで、知らず知らずのうちに糖尿病のリスクが高まっていきます。

これらの生活習慣に当てはまる方は、早め早めに改善をして行きましょう。

糖尿病による合併症とは

血糖値が高い状態が続くと、神経や血管がダメージを受け、合併症を引き起こす可能性があります。代表的な合併症には以下の3つがあります。

・糖尿病網膜症:視力が低下し、失明につながる可能性も

・糖尿病腎症:腎臓が機能しなくなり、人工透析が必要になる場合も

・糖尿病神経障害:手足のしびれ、痛み、感覚異常など

これらは「三大合併症」と呼ばれ、いずれも生活の質(QOL)を大きく損なう原因となります。また、糖尿病は動脈硬化のリスクともなるため、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる可能性もあります。

糖尿病を予防するためのポイント

糖尿病は、遺伝的な要因もありますが、多くは生活習慣の見直しによって予防できます。中でも重要なのが、「食事」と「運動」の2つです。実際に、糖尿病を予防するために気をつけたいポイントを確認して行きましょう。

食事で意識すること

糖尿病予防の基本は、血糖値の急上昇を抑え、適正体重を維持する食事を心がけることです。

具体的には、以下のポイントを意識してみましょう。

◆主食は「食物繊維が豊富なもの」を選ぶ

食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにする効果を持っているため、野菜類、きのこ類、海藻類など食物繊維が豊富な食品を毎食取り入れましょう。

◆野菜を先に食べる(ベジファースト)

食事の際は、野菜を先に食べるベジファーストを実践してみましょう。

食物繊維は、胃の中で膨張して糖質の吸収を遅らせることで血糖値の上昇を抑えます。

そのため、野菜を先に食べておくことで食物繊維がより効果を発揮します。

◆糖質の摂りすぎに注意

糖質は血糖値を短時間に急激に上昇させるため摂りすぎには注意が必要です。

糖質は、ご飯、麺、パンなどの主食類や、いも類などに豊富に含まれています。

主食に偏った食事や、いも類を過剰に摂ることには注意し、糖質の摂りすぎを避けましょう。

◆バランスよく食べる

血糖値の管理のためには、食事をバランスよく食べることも必要です。

糖質に偏った食事では血糖値が高くなりやすかったり、脂質が多い食事では摂取エネルギー量が多く肥満のリスクがあったり、食事のバランスが崩れることは糖尿病のリスクとなります。

毎食、主食・主菜・副菜を揃え、野菜、乳製品などを取り入れたバランスの良い食事を心がけましょう。

◆食事時間を固定し、3食食べる

食事時間が不規則だったり、欠食したりすると、血糖値が急激に変動しやすくなるため要注意です。

食事から食事までの時間が空くと、身体が脂肪を分解して血中に遊離脂肪酸が増加します。

この遊離脂肪酸は、血糖値を下げるインスリンを効きづらくしてしまい、血糖値を上げる要因となります。

そのため、食事時間の不規則や欠食により食事と食事の感覚を開けることで血糖値が上がりやすくなります。

忙しくて食べられない場合などは、なにか少しでも良いのでつまんでみるところから始めてみましょう。

運動で意識すること

有酸素運動や筋力トレーニングなどを行うと、身体にエネルギーが不足するため、エネルギー源である血糖(ブドウ糖)が各細胞に取り込まれ、血糖値が低下します。

また、運動はインスリンの効きやすさを改善する効果があるため、糖尿病の予防・改善には、運動が効果的であると言われています。しかし、やみくもに運動をすれば良いわけではありません。

実際に、どのような運動をすることで血糖値の改善が見られるのでしょうか?

◆1回30分程度の有酸素運動を週2回〜

運動習慣がないという方は、まずは1回30分程度の軽い運動を、週2回程度から始めてみましょう。

強度の高い(息が激しく上がるような)運動は、かえって体に必要なエネルギーを作り出すために血糖値を上げるホルモンが多く分泌されてしまいます。

また、運動習慣がない方が急に運動を行うと、怪我の原因にもなります。

インスリンの効きやすさは、運動後数日程度しか継続しないと言われているため、一度に高負荷の運動を行うよりも、低負荷の運動を継続することが一番重要です。

そのため、まずは運動意欲が続く程度の強度で少しづつ始めてみましょう。

◆筋トレを組み合わせる

有酸素運動に筋トレを組み合わせることで、より効率的に血糖値を管理できるようになります。

筋トレにより筋肉量が増加すると、筋肉の維持にエネルギーを消費するため、何もしていなくても筋肉に血糖が取り込まれやすくなります。

また、基礎代謝量も増加するため、痩せやすい身体を作ることもできます。

ただし、有酸素運動同様、強度の高い筋トレは怪我の原因となります。

「呼吸をしながらできる強度の筋トレ」を基準に、重量や回数を決めていきましょう。

◆日常生活でも「動く」意識を持つ

忙しい毎日で、運動も筋トレもする時間や気力がないという方は、日常生活でも動く意識を持つようにしましょう。

例えば、「エスカレーターの使用をやめて階段を使う」「最寄り駅の1つ前で降りて歩く」など、日常生活の中でも探してみれば運動に結びつく部分があるはずです。

無理なく運動を続けるためには、こういった部分から始めてみるのもおすすめです。

まとめ

糖尿病は「静かに進行する病気」とも呼ばれ、気づかないうちに体をむしばみ、生活に大きな影響を及ぼします。

ですが、早いうちから生活を見直すことで将来の発症リスクを大きく減らすことができます。

今回紹介した内容に当てはまるものがあった方は、この機会に一度自分の生活を見直してみましょう。

中村友也

フリーランス管理栄養士。私立大学の管理栄養士養成課程を卒業後、新卒で高度急性病院で栄養管理、栄養指導に従事。栄養指導件数は300件以上。その後独立しフリーランスへ。現在は管理栄養士としての知識や経験を活かし、ライターとして健康、栄養ジャンルの記事を執筆。また、自身の体験を元にしたブログの運営やコミュニティの代表も務めている。

2025-07-01T09:53:59Z