世界の長寿地域「ブルーゾーン」・認知症がほとんどないギリシャの島民がよく飲む2つの飲み物とは?

長生きの人が多く暮らす世界の長寿地域「ブルーゾーン」

世界には「ブルーゾーン」と呼ばれる、長寿の人が多く暮らす地域がある。アメリカの研究者ダン・ビュイトナーが特定したこれらの地域には、日本の沖縄、イタリアのサルデーニャ島、コスタリカのニコヤ、米カリフォルニア州ロマリンダ、そしてギリシャのイカリア島が含まれる。この中で今回注目したいのがイカリア島だ。ビュイトナー氏は先日、ポッドキャスト番組「Live Well Be Well」で、「イカリア島の住民は、アメリカ人よりも平均で8年も長生きし、しかも認知症の発症率が極めて低い」と語った。米国国立衛生研究所(NIH)によると、現在670万人のアメリカ人がアルツハイマー型認知症を患っており、2060年までにこの数は1380万人に達すると予測されている。一方、イカリア島では「65歳以上の住民全員を調査したところ、認知症の症例はわずか3件の軽度のものだけだった」とビュイトナー氏は報告している。

肉魚はほぼ食べず、大量の野草や葉物野菜を摂取

イカリア島の人々の健康長寿の秘訣はやはり食生活にある。ビュイトナー氏によると、「イカリア島の住民は、世界で最も厳格な地中海式ダイエットを実践している」という。彼らは、果物、野菜、全粒穀物、豆類、オリーブオイルを豊富に摂取し、赤ワインも適量楽しむ。ただし、通常の地中海式ダイエットとは異なり、イカリア島の住民は魚や肉をほとんど食べず、代わりに大量の野草や葉物野菜を食べる。「彼らは、アメリカでは雑草として刈り取られるような野草を100種類以上も日常的に食べている。それらは、赤ワインの10倍もの抗酸化作用を持つ」とビュイトナー氏は説明する。

長寿と認知症予防の鍵を握るハーブティー

イカリア島の人々は毎日のようにハーブティーを飲む。地元の庭や野山で採れるオレガノ、タンポポ、セージ、ローズマリーなどのハーブを使い、お茶を淹れるという。これらのハーブには抗炎症作用があり、さらに軽い利尿作用もあるため、血圧を安定させ、動脈の健康を保つ効果が期待できる。特に、ハーブティーが血圧を下げることが、認知症リスクの低減につながると考えられている。高血圧は認知症のリスク要因のひとつとされており、血圧のコントロールが脳の健康維持に重要だ。

コーヒーも長寿の秘訣?

イカリア島の島民が愛飲しているもう一つの飲み物はコーヒーだ。特にギリシャコーヒーを好んで飲むことが多く、これが健康長寿の秘訣のひとつと考えられている。2010年の研究では、1日3〜5杯のコーヒーを飲むことで、中年期における認知症とアルツハイマー病のリスクが65%低下することが確認されている。さらに、2021年の研究では、1日2〜3杯のコーヒーや紅茶を飲む人は、脳卒中と認知症のリスクが30%低下することが明らかになったコーヒーに含まれる抗酸化物質やカフェインが、脳の神経細胞を保護し、老化を遅らせる可能性が示唆されている。

ちなみにギリシャコーヒーは、フィルターを使用せず、細かく砕いたコーヒー豆を直接煮て抽出するため、通常のコーヒーよりもポリフェノールや抗酸化物質が豊富であり、血管の健康を維持するのに役立つと言われている。

生活習慣の違いがもたらす健康長寿

イカリア島の長寿の秘密は、食生活だけではない。ビュイトナー氏は「イカリア島の人々は、アメリカ人よりも孤独やうつ病に苦しむことがはるかに少ない」と指摘する。「うつ病の人は認知症のリスクが50%高まると言われているが、イカリア島では社会的なつながりが強く、孤独感を抱える人が少ないのが特徴だ。」また、イカリア島は山岳地帯が多く、住民は日常的に坂道を歩く。ビュイトナー氏は「買い物に行くにも自然と坂を登ることになり、日々の生活の中で低強度の運動を続けている」と述べる。「アメリカでは、オフィスやテレビの前で座りっぱなしの生活を送り、30分のジム通いで帳尻を合わせようとするが、それが根本的に間違っている」と警鐘を鳴らす。

ギリシャのイカリア島では、ハーブティーとコーヒーを日常的に飲むことで、認知症のリスクを大幅に下げている可能性がある。これに加えて、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの少ない生活、そして温かな人間関係が、彼らの長寿と健康を支えているようだ。これらの習慣を少しずつ取り入れることで、私たちも健康的な生活を送るヒントを得られるかもしれない。

出典:

Greek island with almost no dementia follows a twist on the Mediterranean diet — the 2 drinks they love

Longevity and Now Almost No Dementia on Greek Island of Ikaria, Expert Says

山口華恵

翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。

2025-03-09T08:21:51Z