「一度休むと戻れないい」気まずさの正体とは?気まずさを消さずに一歩踏み出す方法|心理師が解説

「一度休んだだけで行けなくなってしまうのは、自分がおかしいのかな」そんな風に悩んでいる人もいるのではないでしょうか。「怠け癖かな」「人付き合いが苦手なだけかも」と思う人も多いのですが、実はその背景には、心理的な回避行動や完璧主義、さらには「自分はダメだ」という根深いスキーマ(信念・思い込み)が関わっていることがあります。

回避行動とは何か

人は不安や恥ずかしさを感じたとき、それを避けるために「行動しない」「そのことを避ける」という選択をとることがあります。これを心理学では「回避行動」と呼びます。たとえば、久しぶりに顔を出すと「サボっていたと思われるかも」「居心地が悪いに違いない」等と考えてしまい、行くのが怖くなる。その結果、欠席が続き、ますます戻りにくくなるという悪循環に陥ります。

一度休むこと自体は誰にでもあることですが、回避が重なると「気まずいから行かない → 行かないから余計に気まずい」という負のループができあがってしまいます。

背景にある心理的要因

1. 完璧主義

「どうせ行くなら完璧に準備しなきゃ」「ちゃんとしていない自分を見せたくない」という完璧主義的な思いが強い人は、一度欠席すると「もう遅れを取り戻せない」と感じやすくなります。中途半端な状態で参加することに耐えられず、「なら行かないほうがマシ」と考えやすくなります。完璧主義の人は白黒思考を持っていることも多いため、不完全ならば辞めるという「0か100」な選択を取りやすくなります。

2. 欠陥・恥スキーマ

心理療法の一つであるスキーマ療法では、「自分は欠けている」「恥ずかしい存在だ」という根深い信念を「欠陥・恥スキーマ」と呼びます。このスキーマを持っていると、休んだ事実をきっかけに「やっぱり自分はダメな人間だ」「自分だけが遅れている」とより自己否定的に考えたり、今まで人一倍頑張っていた場合は、「休んだことで優位性を示せなくなる」などと感じてしまい、参加へのハードルが一気に高くなります。

3. 他者評価への不安

本当は「仲間に入っていたい」「認められたい」という気持ちがあるのに、同時に「拒否されるかもしれない」という不安が強くなり、「休んだことをどう思われるんだろう」と足が止まってしまうことがあります。一度抜けたことで「もう話題についていけない」と居場所がないように感じる場合もあります。

「戻れない感覚」の悪循環

こうした背景があると、一度休むことが大きな分かれ道になります。

・一度休む

・「もう戻れない」と感じる

・回避する

・距離が開き、ますます戻れなくなる

そして「やっぱり自分はダメだ」という思い込みが強化され、さらに不安や恥が大きくなっていく。この悪循環は、実際に拒絶されたわけではなくても、自分の心の中だけで起きてしまうのです。

回避行動以外の選択肢

ここで大事なのは、「気まずさ」を完全に消すことではなく、その気まずさを抱えながらも小さな一歩を踏み出すことです。

「久しぶり!」のひと言で十分

多くの場合、他の人は思ったほど気にしていません。シンプルな一言だけで、案外すんなり受け入れてもらえることも多いのです。

完璧でなくても参加していい

途中からでも、準備不足でも、参加するだけで意味があります。オンラインならば「カメラオフで聞くだけ」「顔を出して10分だけ」、対面なら「まずは主催者にメールをしてみる」「挨拶をするだけ」「気まず過ぎたら途中で帰る」など、自分なりのハードルの低い参加方法を見つけてみましょう。

自分を責めすぎない

「また行けなかった」と落ち込むよりも、「一歩踏み出すのが難しいのは、悪循環に入ってしまっただけ」と理解することが大切です。このような悪循環は多くの人たちが経験するものです。自分を責め過ぎないことから始めてもいいでしょう。

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。

2025-10-02T12:09:07Z