2025年7月に米コロラド大学ボルダー校の研究チームが発表した最新研究によると、エリスリトールは脳の血管細胞に対して複数の悪影響を及ぼし、結果的に脳卒中のリスクを高める可能性があるという。研究チームは、人工甘味料入り飲料に含まれる典型的な量(約30g)のエリスリトールを、ヒトの脳内血管細胞に3時間作用させたところ、以下のような変化を確認した。
これらの変化は、血流を妨げる血栓の形成を助長し、結果的に「虚血性脳卒中」(血流が一部遮断されるタイプの脳卒中)のリスクを高める可能性がある。実際、米疾病予防管理センター(CDC)によると、脳卒中のうち約9割がこの虚血性タイプに分類されており、その多くが長期的な障害や死亡につながっている。
エリスリトールは、もともと果物や野菜に微量含まれる天然の糖アルコールであり、体内でも少量は自然に生成される。しかし食品に使われるのは、主にトウモロコシを発酵させて人工的に作られたもので、その濃度は天然に存在するレベルの数百〜数千倍に達する。カロリーは砂糖の約6%、甘さは約70〜80%。血糖値やインスリン値に影響を与えず、虫歯予防にも効果があるとされ、これまで“安心して使える代替甘味料”として広く流通してきた。だが、今回の研究を主導した大学院生オーバーン・ベリー氏は、「こうした甘味料が『健康的』と信じられているからこそ、実際に体に与える影響を検証する必要があると考えた」と述べている。
今回の細胞実験に加え、2023年と2024年には、米クリーブランド・クリニックによる疫学的研究も発表されている。4,000人以上の成人を追跡調査した結果、血中エリスリトール濃度が高い人ほど、今後3年以内に心筋梗塞や脳卒中を発症する確率が高いことが明らかになった。さらに2024年の研究では、エリスリトールの摂取によって血小板が“粘着性”を帯びやすくなり、血栓ができやすくなる傾向も指摘されている。研究を主導したスタンリー・ヘイゼン医師は、「健康のために“良い選択”をしているつもりが、かえってリスクを高めているかもしれない」と警鐘を鳴らす。
米食品医薬品局(FDA)は2001年にエリスリトールの使用を承認しており、現在も「安全な食品添加物」として分類されている。その理由のひとつが「自然に存在する成分であること」だが、今回の研究では、その自然界での濃度と加工食品での使用量の“桁違いの差”が問題視されている。特に注意すべきなのは、エリスリトールが必ずしも成分表示に明記されていないこと。「シュガーアルコール(糖アルコール)」という大まかなカテゴリ名で記載されることが多く、消費者が具体的にどの甘味料を摂取しているか分かりづらいケースが少なくない。製品パッケージに「ゼロシュガー」「糖質オフ」「ケト対応」「ナチュラルスイート」などの表示がある場合は、エリスリトールが使われている可能性が高い。人気の甘味料「トゥルビア」や「ステビア」にも含まれている。
もちろん、今回の研究はあくまで細胞レベルの実験であり、人体における影響を完全に断定するものではない。しかし、疫学研究との相関性や、複数の独立した研究チームからの報告が相次いでいることを考慮すると、少なくとも“摂りすぎには注意”する必要がありそうだ。研究者らは「1日1〜2回の摂取でも細胞への影響が出ている。毎日複数回摂取する人にとっては、さらにリスクが高まるかもしれない」と指摘している。健康志向の食品や飲料を選ぶ際、パッケージのキャッチコピーに惑わされず、成分表示をよく確認すること。そして、“ゼロカロリー”の裏に潜むリスクにも、少し目を向けてみることが、今後ますます重要になりそうだ。
出典:
Popular sugar substitute could raise the risk of blood clots and stroke
Common Sweetener May Raise Stroke Risk by Altering Brain Cells
Ingredient found in popular low-calorie ice cream can increase your risk of stroke
山口華恵
翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。
2025-07-28T10:24:10Z