コロナ禍を経て、韓国・ソウルの暮らしはどのように変化しているのでしょうか。めざましいスピードで変わりゆくその様子を現地からリポート。2023年1月よりソウルに留学中のライター田名部知子さんが、50代ならではの視点で最新スポットやトレンドフードなどを発信していきます。今回は日本人も大好きな「キムチ」について。
【写真11枚】韓国で見つけた中国産キムチや、専門店に並ぶ本場のキムチの数々!
ソウルは今、日本人をはじめとする観光客が世界中から戻ってきて、明洞や東大門、ホンデなどの観光地は、とても速いスピードでかつての賑わいを取り戻しつつあります。私がソウルに来て1か月が経ちましたが、コロナ禍を経たソウルでいちばん驚いたことはキムチの味の変化です。これはもう驚きでした。具体的に言うと、添加物による独特のとろみと甘みにがっかりすることが増えたのです。韓国旅行の楽しみのひとつが、本場のキムチを存分に食べられることをあげる方も多いと思いますが、今は日本のスーパーの味に近いキムチがあちこちの食堂で散見され、それは名店や老舗と呼ばれる食堂に行ったときも同じでした。
並ぶのが苦手な韓国人が行列を作るほど地元でも人気の、明洞にある有名店。ここのキムチは特に辛くておいしいと評判で、店の人気の理由でもありました。昨年夏に行った時は、キムチの味の変化は感じなかったのですが、今回はちょっと“薬品臭さ”が気になりました。
同じく明洞で世界的ガイドにも載ったことのある有名店は、添加物による独特の照りと甘みで、すぐに中国産だとわかりました。ふと壁を見ると、この店は良心的なことに張り紙がしてありました。「牛肉:国産、キムチ:中国産」…思わず苦笑です。
韓国ではコロナ禍以前から、最低賃金の上昇などの人件費の高騰が深刻な問題となり、食堂も気軽に人を雇えなくなっているといいます。そこに加えてコロナ禍による物価の急騰で、日本同様、あらゆる物の値段が上がっていますが、特に高くなったと感じるのが外食産業です。
食堂では、手間のかかるキムチを自家製にしていては、採算がとれないのが現実。名店、老舗といわれる店でも、手作りキムチを売りにしている店はともかく、安価な中国産キムチを出している店が増えていると言います。1月25日付の『中央日報』によると、韓国の輸入キムチの99.9%が中国産だということです。
とはいえ、せっかく韓国へ来たなら、ぜひ本場のおいしいキムチを日本へのお土産に持って帰りたいもの。どういったポイントで選ぶといいのでしょうか?
市場のキムチ専門店なら味や鮮度に間違いがなく、また、ロッテデパートや新世界デパートにある「朝鮮ホテル」のキムチもおすすめです。「朝鮮ホテル」のキムチは、辛さ、野菜の甘み、酸味のバランスが良くて海鮮のうまみもあって味が上品。デパートならではの安心・安全・新鮮なクオリティで、韓国人の友人は「日本へのお土産にもとても喜ばれる」と言っていました。白菜キムチが100グラム2800W(約300円)なので、キムチにしてはやや値が張ります。他には、 ロッテマートや emartなど観光でよく行く大型スーパーで売られている、チョンガ(宗家)キムチやビビゴキムチなども韓国人の友人がおすすめするおいしいキムチです。
買う時のポイントですが、キムチはたいてい300グラムからとなっていて、そこそこの量を買わないといけないので、試食をするのがおすすめです。慣れない人は勇気がいるとは思うのですが、「シシク(試食)?」「シシク ケンチャナヨ?(試食大丈夫ですか)」と、店員さんに聞いてみましょう。快く何種類ものキムチを味見させてもらえるはずです。試食をしてイマイチだった場合の断り方ですが、「ケンチャナヨ(「結構です」の意味の「大丈夫です」)」でOK。片手で拒絶のジェスチャーでも加えれば間違いありません。
白菜キムチやカクテキに関しては、しっかり熟して酸味がでているもの(韓国人は圧倒的にこちらが好き)と、熟していない浅漬け(私はこちらが好み)の2種類を置いていることが多いので、お好みのほうを選んでくださいね。
どこの店でも日本に持って帰りたい旨を伝えると、サランラップでぐるぐる巻きに包装してくれます。前述の「朝鮮ホテル」に関して言えば、密封タイプの袋に入れてくれ、中にガス吸収剤も入っているので、機内の気圧変化や温度上昇による発酵で爆発することがないよう配慮されています。
キムチは発酵食品なので、出発まで必ずホテルの冷蔵庫に入れて保管してください。チェックアウト後、ホテルに荷物を預ける際も、必ずキムチは別にして冷蔵庫に保管してほしい旨をお願いすれば、中規模以上のホテルなら対応してくれるはず。日本から保冷バッグと保冷剤を持っていくとなお安心です。私も10年ほど前、チェックアウト後に冷蔵庫保管を頼まなかったため、スーツケース内でキムチが爆発して大変な目にあったことがあります(泣)。新しくなったばかりの羽田空港のきれいなロビーに、赤いしみをつけてしまいました。
今回の渡韓では、 最初の1週間はホンデのホテルに滞在しました。そのホテルの前にあった24時間営業のソルロンタン専門店のキムチ(白菜、カクテキ)がおいしくてびっくり! 添加物特有の甘みがなく、 海鮮や野菜のうまみや甘さが秀逸です。そもそもソルロンタン専門店のキムチはおいしいものなのですが、「自家製ですか?」と尋ねると、「当り前よ!」と返ってきました。もちろんソルロンタンも体の芯から温まり、牛のエキスを余すことなく堪能できる極上の味。この1か月ですでに4回も通っています(笑い)。
看板メニューのソルロンタンには薄切りの牛肉がゴロゴロ入り、朝食にも昼食にもピッタリ。骨付きカルビがごろっと入ったカルビタンは、ソジュ(韓国焼酎)を飲みながらかぶりつきます。地下鉄2号線のホンデ駅1番出口から徒歩5~6分とアクセスも抜群。店舗の横にはソルロンタンを煮出している工場のようなものがあり、外から見学するのも楽しいです。
おいしいキムチがないとあちこちでぼやいていたら、「うちのオンマ(お母さん)が持って行けって」「近所のおかず屋さんのおいしいキムチ」などなど、友人たちから自家製のおいしいキムチたちが我が家に大集結! 今は毎日、家でいろんなおいしいキムチが食べられて幸せです。
◆田名部知子さん
『冬のソナタ』の時代からK-POP、韓国ドラマを追いかけるオタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2023年1月、韓国ソウルで留学生活と人生初めての一人暮らしをスタート。大学が集まる新村(シンチョン)にある西江(ソガン)大学の語学堂に通う。
2023-03-18T07:14:39Z dg43tfdfdgfd