《繊細な演技が注目》SIXTONES・京本大我、初単独主演作『言えない秘密』で刻んだ最上のパフォーマンス

京本大我さん(SixTONES・29歳)が初めて単独主演を務めた映画『言えない秘密』が6月28日より公開中。ヒロインに古川琴音さんを迎えた本作は、とあるピアノの旋律を介して運命的な出会いを果たす男女の交流を描いたもの。美しく切ないラブストーリーに仕上がっている。本作の見どころや京本さんの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。

【写真】京本大我、ラフなシャツ姿など”最上のパフォーマンス”を随所で見せる

* * *

人気台湾映画を京本大我主演でリメイク

本作は、2007年公開の台湾映画を京本さん主演でリメイクしたものです。『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(2019年)や『総理の夫』(2021年)、『身代わり忠臣蔵』(2024年)など、幅広いジャンルの作品を手がけてきた河合勇人さんがメガホンを取りました。

ピアノが弾けなくなった音大生を京本さんが、“ある秘密”を抱えるヒロインを古川琴音さんが務め、若い男女の心の交流を丁寧に紡ぎ出しています。

“ある秘密”が明かされたとき、心の芯から震えるーー。そんな感動的なラブストーリーがここに誕生しています。

ピアノの旋律を介してつながる男女のかけがえのない時間

留学先での経験によりトラウマを抱え、音楽大学に復学するも、大好きだったピアノとは距離を置こうとしている湊人(京本)。

彼はある日、取り壊しが決まった古い校舎から聞こえてくるピアノの音色に導かれ、どことなくミステリアスな雰囲気を放つ雪乃(古川)と出会います。

ふたりは互いに惹かれ合い、やがて心を通わせていくことに。雪乃の優しいピアノ演奏は湊人を癒し、ともに過ごす時間はかけがえのないものになっていくのです。

雪乃という存在によって、再びピアノに向き合うことができるようになった湊人。ところがある日、雪乃は彼の前から姿を消してしまうのです――。

ヒロイン・古川琴音が手を引く存在に

本作は湊人と雪乃が過ごすかけがえのない時間と心の交流を描くものですから、物語の中心に立ち続けるのは京本さんと古川さんです。

古川さんといえば映画にドラマにと引っ張りだこな存在で、今年は『みなに幸あれ』『雨降って、ジ・エンド。』という2作の主演映画が公開。ヒロインを務めたドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム』(日本テレビ系)の放送が終わったかと思いきや、今度は月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)の放送が開始し、こちらでも重要な役どころを演じています。

さらにこの夏から秋にかけて、『お母さんが一緒』『シサㇺ』『Cloud クラウド』といった出演映画の公開が続きます。そんな彼女が恋愛映画でヒロインを演じるのはこれが初めて。等身大の雪乃像を立ち上げながらも些細な瞬間に“ある秘密”を感じさせ、湊人と私たちをぐいぐい引っ張っていきます。

主演の京本さんは映画への出演がまだ多くはありませんから、役どころとしても古川さんに手を引かれている印象です。経験豊富な彼女の存在があるからこそ成立する作品だとも言えるかもしれません。

さらに、湊人に想いを寄せる幼馴染みを横田真悠さんが演じているほか、三浦獠太さん、坂口涼太郎さん、皆川猿時さん、西田尚美さん、尾美としのりさんたちが要所要所で登場しては物語の展開を盛り上げます。

このような作品で初の単独主演をまっとうしているのが、京本さんなのです。

映画でも勝負できる京本大我

繰り返しますが、これが京本さんにとって初の単独主演映画です。古川さんに手を引かれている印象があると先述しましたが、もちろんこれは俳優としてのふたりの力の差を示すものではありません。

ミュージカル『ニュージーズ』(2021年)をはじめとする数々の大きな舞台に京本さんは立ち、今年は古川雄大さんとともに座長を務める『モーツァルト!』が上演されます。俳優として恵まれた環境の中で、着実にキャリアを重ねている。たまたま映画作品との縁がなかっただけなのでしょう。

本作は湊人がミステリアスな雪乃に惹かれていく物語のつくりになっていますから、“手を引かれる”ようなポジションに、むしろとどまらなければなりません。古川さんがリードし、それに京本さんがついていくのが湊人と雪乃の関係に見られる構図です。

湊人には留学経験によってピアノが弾けなくなってしまったという設定がありますが、この物語の核は、彼と雪乃の特別な関係にこそある。京本さんは自身の演じるキャラクターを無理に押し出すことはせず、抑制の効いた演技を実践し、雪乃との関わりの中で変化していく湊人の心模様をその声や表情に乗せています。表出させています。

舞台と映画ではフォーマットがまったく違いますから、演技に求められることも変わってきます。とくにこの映画に関して言えば、分かりやすい表現は求められていない。大きなスクリーンで上映される前提のものなので、どれだけ繊細な表現ができるかが重要です。

シーンを重ねるごとに湊人の声と表情は少しずつ柔らかく、明るいものへと変わっていきます。このささやかな変化に気がついたとき、京本さんは映画でも勝負できる人なのだと知るのです。

安易な感情表現に走らない

タイトルが『言えない秘密』だというくらいですから、さすがにここで“ある秘密”に触れるのは控えておきます。ただひとつだけ言えるのは、これが湊人と雪乃を繋いだものであり、やがてはふたりを離れ離れにするものでもあるということです。

すでに記しているように、本作における京本さんの演技は極めて抑制の効いたもので、湊人というキャラクターの性格もあってか、感情的になることがありません。いえ、正確に言えば感情的になる瞬間はあるのですが、それを分かりやすい感情表現によって観客に訴えようとはしていないのです。

湊人の感情が激しく動く瞬間というのは、やはり“ある秘密”について知るときのこと。映画の全体像を把握している私たち観客の誰もが、劇中に点在するすべての仕掛けに合点がいき、激しく感情を揺さぶられることでしょう。しかし当事者である湊人の感情の揺れの大きさは、私たちの比ではないはず。にもかかわらず、やはり京本さんは安易な感情表現に走りません。

変化する状況や感情によって力んだり、あるいは緩んだり、劇中の湊人の印象は絶えず変化します。それらを丁寧に積み上げていく京本さんの姿からは、“演じる”という営為に対する誠実さが感じられるというもの(同じくSixTONESのメンバーである松村北斗さんに対して感じるものに近いです)。映画でも勝負できる俳優・京本大我さんの記念すべき初の単独主演作として、本作には彼の最上のパフォーマンスが刻まれていると思うのです。

◆文筆家・折田侑駿さん

1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

2024-07-08T02:15:03Z dg43tfdfdgfd