特に夏は、汗による脱水と長時間座り続けることが重なり、血栓ができやすい条件がそろいます。できた血栓が肺へ流れると、「肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)」を引き起こし、命に関わることもあります。
血液は通常、スムーズに全身を流れています。
しかし、長時間同じ姿勢で座り続けると、足の筋肉を動かす機会が減り、足の静脈に血液がたまりやすくなります。
さらに夏は大量の汗をかきやすく、脱水によって血液中の水分が減少し、血液が濃くなります。
この「血液の流れが悪くなること」と「脱水」が重なることで、足の深い静脈に血栓ができやすくなるのです。
誰にでも起こる可能性がありますが、特に注意が必要なのは次のような方です。
これらに加え、真夏の長時間移動では、健康な人でも血栓ができるリスクが高まります。
「エコノミークラス症候群」という名前から、飛行機だけの病気と思われがちです。
しかし実際には、
・車での長距離運転や同乗
・新幹線
・高速バス
・フェリー
・長時間の映画鑑賞やデスクワーク
など、長時間ほとんど動かない状況であれば、どこでも起こる可能性があります。
特に渋滞にはまって何時間も動けない車内では、水分補給やトイレを我慢しがちになるため、さらにリスクが高まります。
足の静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」では、
といった症状がみられます。
「両足ではなく、片脚だけ」という点が大きな特徴です。
これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
足にできた血栓が血流に乗って肺へ流れると、「肺血栓塞栓症」を発症します。
すると、
などの症状が現れることがあります。
肺血栓塞栓症は命に関わる病気です。
長時間移動後にこれらの症状が現れた場合は、すぐに救急車を要請してください。
血栓を予防するためには、血液の流れを良くすることが大切です。
移動中は、
⚫︎1~2時間に一度は立ち上がって歩く
⚫︎足首を上下に動かす
⚫︎ふくらはぎの筋肉を意識して動かす
⚫︎こまめに水分を補給する
⚫︎アルコールの飲み過ぎに注意する
⚫︎ゆったりした服装を選ぶ
ことを心掛けましょう。
弾性ストッキング(着圧ソックス)が勧められる場合もありますが、持病のある方は使用前に医師へ相談すると安心です。
足のむくみや痛みは、疲労や筋肉痛と勘違いされることがあります。
しかし、
といった症状は、血栓症の可能性があります。
「様子を見よう」と自己判断せず、早めに医療機関を受診することが重要です。
夏の長時間移動では、脱水と座りっぱなしが重なることで、足の静脈に血栓ができやすくなります。飛行機だけでなく、車や新幹線、高速バスなどでも起こる可能性があり、誰にでも起こり得る病気です。
特に、片脚だけの腫れや痛みは深部静脈血栓症のサインであり、さらに突然の息苦しさや胸の痛み、失神などがあれば、肺血栓塞栓症を疑う必要があります。
夏の帰省や旅行では、「こまめな水分補給」と「定期的に足を動かすこと」を意識し、危険な症状があれば速やかに医療機関を受診しましょう。早めの対応が、重篤な合併症を防ぐことにつながります。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
2026-08-05T10:09:03Z