「暑くなってから、ずっと調子が悪いんです」
「たぶん夏バテだと思います」
夏になると、こうしたご相談が増えてきます。
朝から身体がだるい。
何をするにも億劫。
寝ても疲れが取れない。
食欲もいまひとつ。
7月まではそれなりに動けていたのに、8月に入ったあたりから急に調子を崩してしまった。
これだけ暑い日が続いていれば、「暑さのせいだろう」と思うのも当然だと思います。
もちろん、気温や湿度の高さが身体に与える負担はあります。
でも、更年期の女性のご相談にのっていると、夏の不調をすべて「暑さ」だけで考えてしまうと、見落としてしまうものがあると感じています。
なぜなら夏は、気温が上がるだけの季節ではないからです。
夏になってから調子を崩したという方のお話を聞くとき、私は暑さだけではなく、生活全体を見ていきます。
すると、
「そういえば夏休みに入ってから、生活時間が変わりました」
「子どもが家にいるので、お昼ごはんを作るようになりました」
「旅行が続いていました」
「お盆に帰省しました」
「普段より人に会う予定が多かったです」
など、いろいろな変化が出てくることがあります。
一つひとつを見ると、それほど大きなことではないかもしれません。
子どもが夏休みに入った。
家族の起きる時間が変わった。
食事を作る回数が少し増えた。
旅行へ行った。
帰省した。
普段会わない親戚に会った。
いつもより外出が増えた。
寝る時間が少し遅くなった。
そして、そこに夏の暑さが加わります。
つまり夏というのは、気温だけではなく、生活サイクルそのものが大きく変わりやすい時期なのです。
ここで大切なのは、一つの大きな原因を探そうとしすぎないことです。
「旅行で疲れた」
「暑さでやられた」
「睡眠不足だった」
というように、一つだけ原因を決めようとしても、なかなか見つからないことがあります。
実際には、
少し睡眠時間が変わった。
少し家事が増えた。
少し一人の時間が減った。
少し外出が増えた。
そこに暑さが加わった。
そんな「少し」がいくつも重なっていることがあります。
一つだけなら対応できていたものが、いくつも同時に重なることで、身体がついていかなくなってしまう。
私は、夏の不調について相談を受けていると、こうしたケースが少なくないと感じます。
特に更年期は、「以前ならこれくらい大丈夫だった」という感覚と、今の身体の状態が合わなくなっていることがあります。
そのため、一つひとつの予定については、「これくらいなら大丈夫」と思ってしまいます。
旅行くらい大丈夫。
帰省くらい大丈夫。
子どもの夏休みくらい大丈夫。
友人との予定くらい大丈夫。
確かに、それぞれ一つだけなら大丈夫なのかもしれません。
でも、今年の夏はそれらが全部重なっていなかったでしょうか。
体調を崩したとき、多くの方は原因を探そうとします。
「あの日出かけたのが悪かったのかな」
「冷房に当たりすぎたかな」
「食事が悪かったかな」
もちろん、原因を考えることが必要な場合もあります。
ただ、はっきりした原因が思い当たらないのであれば、「何が悪かったんだろう」ではなく、「調子がよかった頃と比べて、何が変わったんだろう」と考えてみてください。
たとえば6月、7月頃はどう過ごしていたでしょうか。
何時に起きていましたか。
午前中は何をしていましたか。
お昼はどうしていましたか。
一人で過ごす時間はどのくらいありましたか。
外出は週に何回くらいでしたか。
何時頃に寝ていましたか。
それが夏休みに入ってから、どう変わったでしょう。
こうやって比べてみると、
「そういえば朝の時間がなくなっていた」
「毎日お昼ごはんを用意するようになっていた」
「一人になる時間がほとんどなくなっていた」
「週末ごとに予定を入れていた」
など、自分ではそれほど意識していなかった変化が見えてくることがあります。
私たちは、大きなイベントには「疲れるだろう」と身構えます。
長距離の旅行へ行く。
朝から一日中出かける。
何日も忙しく働く。
こういうときは、「疲れるかもしれないから休もう」と考えやすいものです。
ところが、生活の小さな変化については、それほど負担だと思いません。
いつもより少し遅く寝る。
食事の時間が変わる。
家族が家にいる。
普段と違う人と過ごす。
出かける時間が少し増える。
一つひとつは、特別なことではありません。
でも身体からすると、毎日「いつもと違う」に対応している状態とも考えられます。
さらに夏は、それだけではありません。
外に出れば暑く、室内に入れば冷房が効いている。
夜になっても気温が下がりにくい日もあります。
いつもの生活の変化に加えて、暑さという身体的な負担にも対応しなければなりません。
「特別なことは何もしていないのに疲れる」
というときには、こうした小さな変化の積み重なりも一度見てみてほしいと思います。
もう一つ注意したいのが、忙しい最中ではなく、少し落ち着いてから体調を崩すケースです。
夏休み中はなんとか動けていた。
旅行にも行けた。
帰省もできた。
家族との予定もこなせた。
だから、「今年は意外と大丈夫だった」と思っていた。
ところが、お盆が終わった頃になって急に動けなくなる。
朝起きられない。
何もしたくない。
身体が重い。
そこで、「急に夏バテした」と感じることがあります。
でも、それまでの数週間を振り返ると、ずっと普段とは違う生活が続いていた、ということがあります。
その場その場では乗り切れていても、回復する時間が十分に取れていなかったのかもしれません。
ですから、体調を崩した「その日」だけを見るのではなく、その前の1週間、2週間を振り返ってみることも大切です。
では、生活サイクルが変わったことに気づいたら、どうすればいいのでしょうか。
夏休み中に、普段とまったく同じ生活をするのは難しいと思います。
家族がいれば食事の時間も変わります。
旅行や帰省をすべてやめる必要もありません。
大切なのは、全部を元に戻すことではなく、「私にとって、どの変化が一番大きかったんだろう」と考えてみることです。
たとえば、一人になる時間がなくなったことが一番しんどかったのであれば、一日の中で30分でも一人になる時間を作ってみる。
睡眠時間がずれているのであれば、まず起きる時間だけ戻してみる。
予定が続いているのであれば、次の予定との間に何も入れない日を作ってみる。
旅行や帰省のあとに疲れが残るのであれば、帰宅した翌日までを予定の一部として空けておく。
自分にとって影響の大きかったものを一つ見つけて、そこから調整してみます。
夏に体調が悪くなると、「この暑さだから仕方がない」と思ってしまいがちです。
確かに、暑さそのものを自分で変えることはできません。
でも、自分の生活の中に起きている変化なら、調整できるものがあるかもしれません。
夏休みに入って、何が変わったのか。
旅行や帰省はどのくらいあったのか。
一人で過ごす時間は減っていないか。
睡眠時間は変わっていないか。
食事の時間はどうか。
予定が続きすぎていないか。
そこに今年の暑さが重なっていなかったか。
一度、夏が始まる前の自分と比べてみてください。
「夏バテだと思っていたけれど、私はずっと普段と違う生活をしていたんだ」と気づく方もいるかもしれません。
更年期になって、以前より変化に対応することがしんどくなったと感じることがあっても、必要以上に落ち込む必要はありません。
今の自分が、どのくらいの変化なら無理なく対応できるのかを知っていけばいいのだと思います。
夏の不調を「暑いから」で終わらせるのではなく、「この夏、私の生活は何が変わった?」と一度振り返ってみる。
もしかすると、身体は暑さだけに疲れていたのではなく、夏の間ずっと続いていた「いつもと違う毎日」に、一生懸命対応し続けていたのかもしれません。
高本玲代
フェムテック起業家・社会活動家。自身のウツや更年期の経験から更年期女性のケアプログラム「よりそる」を立ち上げる。東京都をはじめとする自治体やポーラをはじめとする企業向けに研修を実施。NHKをはじめメディア掲載50社以上。「がんばらない更年期」についてYoutube「更年期アカデミー よりそる」で発信中。
2026-08-29T12:08:52Z